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悪魔と野犬ノ仔 37話

 尚哉が帰って来たのはそれから一週間後だった。
 水無月は謝らなかった。
 要は水無月と家を出る事を尚哉に伝えた。尚哉は何か言いたそうだったが、その場では納得してくれた。
 要は、水無月を先に家に戻る様に伝えると尚哉に近づいた。
「尚哉、ありがとうな。気持ちも。ごめんな」
「なんだよ……いきなり……優しくなってさ……」
「多分お前以外だったら一緒には住めなかったと思うよ」
「……うそつき」
 尚哉は涙を浮かべて下を向いた。要は誰といても一人だった事は分かっていた。きっと誰と住んでもそれは変わらずだった事も分かっていた。それでも優しい嘘を言ってくれた事は尚哉の真剣な気持ちが伝わったからだ。
 家を出て行く時、尚哉は飲み屋に居た。見たくなかったからだ。
 尚哉はこうなって余計に自分が要を予想していた以上に好きだった事に気付いて、傷を癒す様に浴びる程酒を飲んだ。だが、自分たち人間と住んでいる次元が違うかのような二人の異様な関係に入る隙がないのも分かった。
「ますたー、誰か紹介して。超格好いい人ね」
 尚哉は顔見知りのマスターに絡んだ。
「アンタならいくらでも捕まえられるでしょうが! 私なんて見てみなさいよッ。贅沢よッ」
 マスターは悩ましげに濃くなってきたヒゲを悲しげに撫でた。

 要たちは今までよりもずっと小さく狭いアパートを借りた。
 要はアルバイトをしながら大学に通い、水無月も勉強をしながらショップで懸命に実務訓練を重ねる毎日だった。それはまるで昭和の時代のように穏やかで慎ましく、贅沢な生活ではなかったが幸せだった。
 だが、水無月を側に置いて要の欲望が大人しくしていられる訳もなく、それは水無月も同様だった。
 まして、水無月の通うショップには水無月が要以外で唯一格好いいと思う男性がいた。要は募る独占欲で首輪を付けてしまいたくなった。
 快楽に弱い水無月に、要からもっと離れられなくなる程身体を繋げたいと思う度に要は自分の原因不明の症状を恨んだ。
 要と水無月が一緒に住み始めて暫く経った時だった。
「ミナ」
「なに?」
「母さんたちに……言いに行こうか」
「僕たちのこと?」
「そう」
「いいの?」
「いつまでも隠していても仕方ないしな……あと、拓水にも会いに行こうかと思ってる」
「僕も拓水兄ちゃんに会いたいっ」
 水無月は嬉しそうに要の背中に抱きついた。
「お前、犬くさい」
「うんっ。今日も犬いっぱい触ったよっ。皆すごい怖がってたから大丈夫だって言ってきた!」
「そうか。偉いな」
「兄ちゃん……」
 水無月が要の首筋に舌を這わせた。
 随分長い間身体を重ねていない水無月は要の匂いを嗅ぐだけで直ぐにスイッチが入るようになっていた。いくら他の方法で生理欲求を果たしていていても満たされない部分は互いにある。
 要は実家に帰ったついでにやはり病院へ行こうと漸く腹を括った。




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悪魔と野犬ノ仔 36話

 落ち着いてきた水無月はゆっくりと歯を要の腕から抜くと、ドクドクと大量の血液が溢れ出て来て床を赤く染めた。
 水無月は何故か口内に溢れる鉄の味を舐め、飲み込んだ。鉄の味は唇にも付いていて、それを舌でグルリと舐め取った。視線の先には怯えきった尚哉がいた。そして段々と安心する暖かい掌が自分を撫でている感覚を感じ、落ち着きを取り戻してきた。
「ミナ。ミナ……」
 要に顔をそっと上に向けられて目が合った。とても優しく、愛おしげに見つめる要を見て水無月の胸の奥がギュッと苦しくなった。
 そして要の指が水無月の顎を上に上げると、そっと熱い舌先が水無月の唇を舐めた。
 要の舌先が綺麗な朱色に染まり、それは水無月の舌に絡まってきた。鉄の液体を二人で味わうように互いに唾液を送り合いながらする口付けは異常なまでに互いを興奮させた。
「か……要……何して……血が……ねぇ……」
 尚哉は大量に血液を流しながら血に染まった弟の唇をまるで食べるように吸う要と、恍惚とした表情で舌を絡ませる弟の光景に戦慄した。
 自分の存在が全く二人のいる世界と違う事を肌で感じた尚哉は怒りが込み上げてきた。
「ねぇッ……血が凄いよッ!!」
 尚哉が大声を出すと、水無月の唇を甘噛みしていた要がゆっくり唇を離して尚哉の方を向いた。
 振り向いた要はまるで吸血鬼が食事を邪魔されたような危険で妖艶な顔をしていた。
「ねぇ……何してんの……ミナちゃんは弟だろ?」
「別に……本当の弟じゃねーし……本当の弟でも同じ事になってるけど」
「え……本当の弟じゃないの? ……ていうか、その子……どうしちゃったわけ……」
 尚哉は動くようになった足で身体を動かすと、少しずつソファの向こう側へ移動しながら喋った。
「コイツは、野犬に育てられたから……半分犬なんだ……俺の、可愛いイヌなんだ」
「……は?」
 尚哉は、要がまたふざけてそういうプレイのような発言をしたのかとも思ったが、先程の冗談とは言えない水無月を見て疑いの言葉は出せなかった。
「昔ニュースで少し騒がれたけど見なかったか」
 そう言われればそんなニュースもあった気がした。
 尚哉は少しずつだが事情が掴めてきたのか、冷静さが戻ってきた。そして立ち上がると救急箱を取り要の近くに置いた。本当は手当てをしたかったが、目を大きく見開いたまま瞬きもせずに動く自分を見る水無月に近づけなかった。
 憎い相手を睨む人間のとは違い、少しでもおかしな動きを見逃さないように視野を広げ、動体視力をフルに活用する為に瞳孔が開いているのが異様な恐怖をかき立てる。
 そんな警戒態勢の水無月を優しく包み込む要に、尚哉は少し理解に苦しんだ。
 要が何故かとても嬉しそうだったからだ。
 今日はこの二人と一緒にいる気になれない尚哉はその足で部屋へ行くと軽く荷物を持ってそのまま家から出て行った。

 要は救急箱を取ると包帯をきつめにギュッと腕に巻き、血を止める処置をした。
 そんな要を見て水無月はボタボタと涙を落とし、「兄ちゃん……痛いの……ごめんなさい……」と謝った。
「いいよ」
「ごめんな……さいっ……っ」
 理性の戻った水無月は一番大切な人を傷付けた事でとても大きなショックを受けていた。
 要は傷の手当てを終えると再び水無月を懐へ抱き寄せた。
「お前がこんなに怒るなんて思わなかった……嬉しかったんだ……俺もきっとお前が他の奴とそういう事してるの見たら殺すだろうし、お前も殺すつもりだっただろ、さっき」
「だって……凄くイヤだった……尚哉くんと恋人なの?」
「違うよ」
「じゃあ僕と恋人になってよ」
「お前、飼い犬が飼い主と恋人になりたいって言うのか?」
 要は楽しそうに意地の悪い事を言って水無月の頬を摘まんだ。
「イヌは恋人になれないの?」
 水無月がそっと要の頬を摘まみ返す。
「さあ……でも……」
 要は水無月の胸に顔を埋めた。
「もしお前を抱けなかったとしても、お前は俺をずっと好きでいてくれるのか?」
「兄ちゃん、やっぱり頭痛くなるの? 僕と……そういう事すると……」
「……うん」
「病院はイヤなの?」
「……うん」
 いつも突っ張って意地の悪い子供が急に弱みを見せたような態度に、水無月は要が急に可愛く思えて要の頭をギュウと抱き締めた。
「大丈夫だよ。僕は最初から兄ちゃんしか見てないから」




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悪魔と野犬ノ仔 35話

 要は強く尚哉の頭を掴むと乱暴に肉棒を口の中に出し入れした。
「んっ……んんっ」
 尚哉は苦しげだが恍惚とした表情で要を見つめながら唾液を溢れさせた。
 要も尚哉も久々の行為に夢中だった。そしてテレビをつけっぱなしにしていたのがいけなかった。
「にいちゃん……?」
 要がソファに座りながら振り返ると、そこには呆然と立ち尽くす水無月がいた。
 要は何も言葉を発さず水無月を見ながら荒い息を整えた。
 尚哉はゆっくりと見せつける様に要の肉棒を口からヌルリと出して唾液を口端から垂らした。
「なに……なんで尚哉くんが兄ちゃんの……」
 水無月は手を口元に持っていき不安を露わにした。
「ミナ。お前友達と飯は」
 要は何事も無かったようにそう聞くとだらしなく濡れたままの下半身の身なりを整えた。
「あ……ぼく……お金足りなくて……また今度って」
 水無月はゆっくりと要たちのいるソファに近づいた。そしてまだ要の足下に座っている尚哉を上から不思議なものでも見るような目で見下ろした。
「ミナちゃん、ごめん。僕お兄さんの事好きなんだ」
 尚哉は要の足に手を絡ませた。
「僕も好き」
 水無月の不安気な表情は少し苛立つような顔つきに変わった。
「そうだよね。だって自分のお兄さんだからね。でも恋人にはなれないんだよ?」
「恋人……」
「そう」
「尚哉くんは兄ちゃんの恋人なの?」
「んー……恋人になりたい候補者ってところかな」
「本気で言ってんのかお前」
 尚哉の言葉に要は無表情の目を向けた。
「本気だよ。好きだよ要……この際ミナちゃんにも認めて貰いたい」
 尚哉は要の太股に口付けをした。
 すると獣のような低い唸り声が地を這うように尚哉の鼓膜に届き、得体の知れない恐怖感に身を硬くした。
「え……なに……」
 音の方を見ると四つん這いになって歯を剥き出しにしている水無月がいた。それは狂犬のように目を大きく見開き、低い唸り声と共にジッと尚哉の目を見ていた。
 少しでも動けば途端に襲い掛かってきそうで、尚哉はその場で動けなくなった。
「ミナ」
 空気を切るような鋭い要の声が響いた。
 それでも唸り声は止まず、水無月の開いた瞳孔は未だ尚哉の視線を離さなかった。
「ミナ」
 もう一度要が声を発したと同時に、「か、かなめっ」と尚哉が要にすり寄った。
 すると唸り声は叫び声に変わり、爪を立てた水無月が尚哉に飛びかかった。
「ウワァァアアーッ」
 恐怖で叫び声を上げながら体勢を崩した尚哉を喰い千切ろうと襲った水無月だったが、その歯が食い込んだのは要の腕だった。
 我を無くした水無月は噛みついて流れ出した血の味に更に興奮を増してグッと顎に力を入れた。その歯は柔らかな人の腕の肉にグリグリ入り込んで筋肉の間にまで入り込んだ。
「い……いやあ……なに……何だよ……コイツ……ッ」
 恐怖で涙を流しながら腰が抜けて逃げられない尚哉は手足をバタつかせた。
 要はボタボタと血を流しながら、歯を食い込ませたままの水無月をグッと自分の胸に引き寄せた。
「ミナ……大丈夫。落ち着け」
 要は耳元で優しく優しく囁き、そして引きつってしまっている頬を舐めた。そしてゆっくり逆立ってしまった髪を撫で、頭にキスをした。




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悪魔と野犬ノ仔 34話

 要の頭痛には特徴が出てきた。要自身が水無月を攻めようとすると酷く痛みが増す事が多かった。勿論、酷い時は水無月に触れただけでも表れる事もあった。その為、二人は恐る恐る触れる事が日常になりつつあった。
 水無月や尚哉は要に強く病院に行くように勧めていたが、要はこんなおかしな症状を言ったところで精神科へ回されるだけだと思い、ずっと病院を拒否していた。
 そうこうしているうちに、水無月がスクールに通いながら実務経験の一環として働かせて貰えるお店が見つかった。
「すごく優しい先生でね、きちんと僕の話を最後まで聞いてくれたの。生い立ちからちゃんと話したんだよ? でもがんばりなさいって」
 水無月は少し興奮気味だったがとても誇らしげに要に報告した。
「その先生は幾つの人なんだ」
「三十五歳くらいだって」
「家庭は?」
「バツ一だって。格好いいのに」
「へぇ。お前の好みだって訳か」
 要は皮肉に微笑んだ。
「好みっていうか、僕の好みは兄ちゃんだけど先生は普通に格好いいなって思ったよ?」
 水無月はまだ微妙に気を遣うという事ができない。正直だから嘘がない分信用出来るが、正直が辛い時もある。
 目標に向かって頑張る水無月が生き生きとしていて、要は時折眩し過ぎて影に隠れてしまいたくなった。
 スクールに通いだした水無月は友達も増え、要に連絡を取っては友達とご飯を食べてきてもいいかと聞いてくるようになった。まるで要の子供のようだ。
 複雑な気持ちのまま、水無月に置いていかれる不安も麻痺してきて、意味の分からない悪夢と幻覚に怯えて疲労が溜まってきていた。
「あれ? ミナちゃんは?」
 尚哉が外出先から帰宅してきた。
 尚哉は今はAV業界から抜けカフェの店員として働いていた。
 見た目は可愛いので尚哉のファンになるお客さんが増えたらしいのだが、尚哉はイケメンにしか興味がない為鬱陶しいとボヤいていた。
「ミナは友達とご飯食べて帰るんだと」
 要はそう言ってタバコを吹かした。
「あら。寂しそうね、要」
「別に。心配なだけだ……世間慣れしてないからアイツは」
「ふぅん。俺は……嬉しいけどね?」
 尚哉は要の後ろに回りギュッと抱きついた。要は何も言わずそのままタバコを吸う。
「ねぇ……してよ……久し振りにさ……俺、要に抱かれたいよ」
 要は考えた。

(コイツ相手だとあの現象はない気がする……ヤってもアレは出てこないか?)

 要は尚哉の腕を引き、両手で尚哉の顔を掴むとゆっくり自分の下半身まで下ろした。
 尚哉は既に蕩けるような目で要を見上げながら要の肉棒を取り出して舌先で味わいだした。
 頭痛は起こらない。




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ヾ(:´Д`●)ノアワワワヾ(●´Д`;)ノ

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悪魔と野犬ノ仔 33話

 水無月は上に乗るように要に跨り、その透明な穴に自分の肉棒をゆっくりと入れ込んだ。
「あ……あぁ……すごい、コレ……ぬるぬるっ」
「いいよ、ミナ。腰を動かしてごらん」
 要の愛おしそうに自分を見つめる目を見ると水無月の肉棒は更に熱を持って腫れた。
 水無月はとても恥ずかしかったが、下半身の想像以上の気持ち良さが動きを加速していった。
「ほら。これ、透明だからお前のが出たり入ったりするのがよく見える」
「やだぁ……っ」
 水無月は要の腰の両脇に腕を固定させ、まるで要を攻めるように動いた。
「ハァっ……ハァっ……すごい、気持ちいいっ」
「俺がお前にヤられてるみたいだな、これ。……良い眺めだ」
 透明の筒の内部は人工的に確実に男性器の気持ちいい場所を刺激するような構造になっている。筒を強く握ればギュッと締まって刺激は更に強くなる。そんな力加減で要にコントロールされて、水無月の羞恥心は消えた。
「は……ッ……あんッ……アッ……アアッ」
「ミナ、もう少し声押さえろ。尚哉に気付かれる」
「こえっ……でちゃうぅ」
 水無月は切な気な表情で首をゆっくりと左右に振った。
 要の喉仏が上下する。
 水無月の卑猥にしなる腰を、要は撫でながら手でもその動きを感じ取っていた。
「お前が女とヤるとそういう顔になんのかな」
「そんな……の…した事な……ぃっ」
「ああ……したらお前をもう外へは出さないよ」
 要が優しくキスをする。冗談など一つも言っていない要の鋭く優しい目に水無月は歓喜で鳥肌が立つ。
「兄ちゃんっ……兄ちゃんもっ」
 水無月は要の肉棒を必死に取り出すとそれを自分の入っている同じ筒の穴へ捻じ込んだ。
「お前すげぇ事すんな」
 要は可笑しそうに笑いながらも水無月の余裕のなさに興奮した。
 筒は二つの硬い肉棒で一杯になった。赤く腫れた肉棒は互いにヌルヌルと擦れ、外側の凸凹とした筒の形状で更に気持ちが良い。
 要は水無月の腰の動きに合わせて自分も腰を動かした。要は外れないようにギュッと片手で筒を掴み、もう片手で水無月の尻を強く掴んだ。
「あっあっ……かなめぇっ」
 初めて名前で呼ばれた要は妙な興奮で更に肉棒を硬く大きくさせた。
「いいぜ、ミナ……俺を犯してるつもりで名前で呼べよ」
 要はゆっくりと尻を掴んでいた手を移動させ、水無月の蕾へ指を侵入させた。
「あああんッ……そんな事したらっ……ぼくっ……!」
「ほら……もっと腰振って俺をヤれよ」
 要は囁くような声と、しっとりとした誘う女の様な色気で水無月を煽り、そして蕾の中を軽く引っ掻いた。
「か……かなめ……っ……要ぇ……!」
 水無月の可愛い顔に雄の表情が加わり、要の両肩を強く押さえて腰を動かし始めた。
 二人の肉棒は高速で擦れ合い、荒い息遣いがグチャグチャという卑猥な音と共に部屋に響き渡る。
「イ……イクよ……要……ハァっん」
 要は気持ち良さそうな目で水無月を見ながら舌を出してきた。
「あっ……あっ……可愛いっ……要……ッ」
 水無月は要の顔を両手で引き寄せると、その差し出された舌を夢中で絡め取り、水無月に舌を犯されながら要は射精し、水無月もそんな要を見て同時に射精した。




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新リバ体験☆(笑)

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悪魔と野犬ノ仔 32話

 要の近寄りがたい冷たい瞳を見つめながらその手を取り、水無月は自分がとても悪い事をしている事を自覚していた。そしてそれに酷く興奮していた。
 水無月は履いていたハーフパンツを少し降ろすと、ツルツルとした生地のボクサーパンツを曝け出した。
 くっきりと硬く立ち上がった水無月の下半身の形が浮き出ているそこに、力強く要の手を擦りつける。
 要は面白いものでも観察するように、叱る事も窘める事もなくジッと見ていた。
 水無月はゆっくりと腰を上下に動かし、時折我慢出来ず急きたてられるように腰を速く動かしてその興奮を伝えた。
「濡れてきてるぞ、ミナ……ほらここ。染みになってきてる」
 要は濡れて色が濃くなっている場所に人差し指で円を描く様に触れた。濡れたその場所はヌルヌルと滑って、指先を離すと透明の糸が伸びた。
「やっ、やぁんっ」
 水無月の敏感なそこはパンツの上から触れられただけで腰がビクついた。
「お兄ちゃんの舐めたい」
 水無月は唇を艶々と光らせながら要の股間に顔を埋めた。
「ミナ……」
 要は猫ッ毛のような柔らかい水無月の髪の間に全ての指を入れ込み、腰を浮かせた。
 要の肉棒は水無月が思っていた以上に膨れ上がり、布越しにでもその熱が伝わってきた。
 水無月はその肉棒を取り出すと、懸命に口の中へ入れ込もうとした。すると突然要がまた頭を片手で押さえながら痛そうに呻きだした。
「ってぇ……何だってんだ……クソッ……」
「大丈夫? また痛いの?」
「いや、この間よりはまだいい……大丈夫だ」
 要が落ち着くまでの少しの間、水無月は要の手や膝をペロペロ舐めてみたり、心配そうに要を見つめながら顎を要の腕に乗せてみたりしていた。
 要はその間もゆっくりと水無月の背中や腰を撫でていた。
 そのうち痛みが引いたのか、要の手は段々水無月の臀部をいやらしく揉み始めた。
「あ……んっ」
「いやらしい声だな」
 水無月は煽る様に尻たぶを揉んでくる要の掌に思わず腰をうねらせる。
 要を欲しくてたまらないのを分かっている癖に、要は水無月が腰をうねらせる度に意地悪く後ろの蕾を爪で軽く引っ掻いてきた。
「あんっ……あんっ……も……っとぉ」
「お前の腰、エロいな……ほら。こうやって握っててやるから、ヤッてるみたいに腰振ってみろ」
 水無月は四つん這いにされると、その体勢で要に肉棒を掴まれた。要は思い出したように引き出しからローションを取り出すと、それをたっぷり手に取り再び水無月の肉棒を握った。
 水無月はローションの冷たさに「ひゃっ」と腰が引けたが、それでも命令されるがままに腰を動かしてみると、した事のない行為の筈なのに本能で腰が前後に動きだした。
 水無月の肉棒が要の筒となっている手に出し入れされる度にクチュクチュといやらしい音が部屋に響いた。
 要の指の凹凸部分が水無月の気持ちいい部分に当たって腰の動きは更に激しくなる。
 何とかもっと強く擦り付けたくて腰を動かしてみるが、勢い余って肉棒が要の手からはみ出してしまう。
「ちょっと待ってろ」
 要はそういうと先程の引き出しから何やら透明の柔らかい筒のような物を取り出してきた。
「何? それ」
 軽く息が上がった水無月は頬を紅潮させながら続きを始めたくて目が潤んでいる。
「俺の手よりもずっと気持ちいいぞ。ほら。ローションも一杯中に入れてやるから……この中に突っ込んでみろ……こうして持っててやるから」
 要はベッドに背を凭れながら自分の下半身辺りで透明のオナホールを固定した。




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オナホぷれいヽ(〃v〃)ノ ワチョーイ☆・゚:*
そして飛び飛びの不定期ですみません、
次回明後日のUPになります><
土曜で何とかチャージ出来ればと思っております(´Д`A;)

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悪魔と野犬ノ仔 31話

「どこ? 要の部屋? あ、やっぱり!」
 勢いよくドアが相手尚哉が飛び込んできた。
「うわあぁ可愛いッ」
 水無月を見てテンションが上がった尚哉は水無月に近づき手を取った。
「本当に可愛いッ! そりゃあ要の無表情も笑顔になるわッ! あ、俺尚哉ね! 宜しく! 水無月くんでしょ?!」
 圧倒されていた水無月だが、スッと立ち上がると「初めまして、水無月です宜しくお願いします」と頭を下げた。
「ああっ、そんな畏まらないでよぅ! 水無月ちゃん身長俺と一緒くらいかな? 168センチくらい? 年は幾つ? 要の奴あんま教えてくれなくてさっ」
「あ、はいっ、身長はそのくらいだと思います。年は要兄さんより一つ下です」
「え? そうなの? それにしては……随分幼い雰囲気というか……天使みたい」
 尚哉はニヤけた顔で水無月の頭を撫でた。
 水無月は無意識にその手の匂いを嗅ごうとして鼻先をスッと伸ばした。
「えっ……何?」
「あ、コイツの癖。気にすんな。嗅覚半端ないから。匂い、嗅がせてやって」
 要は水無月の荷物を片づけながら兄のような口調で説明した。
「あ、 ゴメンなさい、僕、つい……」
「いいよ全然! でもアレだね……二人全然似てないねぇ、まるで対極だね」
「うん、僕と要兄さんは……」
「おい、飯。まだだろミナ。尚哉も余計な事言ってねぇで行くぞ」
 要としては余計な話しは他人に聞かせるつもりはなく、話しを遮った要は二人を近くの簡単に食べられる店に連れだした。
 夜になり、テレビを付けながら尚哉は水無月によく話かけていた。水無月の方はまだ緊張しているようだったが、疲れが出て来たのか少し寝むそうに瞼をゆっくりと動かしていた。
「ミナちゃん、もう寝る? 俺と一緒に寝る?」
「ううん……要兄さんと……」
「え? ミナちゃんいくらミナちゃんが可愛いからってその年になってお兄さんと同じ布団で寝るとかはちょっと……要なら手でも出しかねないし」
「おい、いいんだ。別に布団は下に敷くから。コイツの寝相と歯ぎしりと寝言は普通の人間には耐えられないぞ」
「えッ、意外……そうなのミナちゃん?」
「ぼく…そんなこと……」
「行くぞミナ、来い」
 寝落ち寸前の水無月は無意識に四つん這いで要について行こうとして、振り返った要にヒョイと担がれると部屋へ消えて行った。
「いいな……ミナちゃん」
 そんな様子を少し羨ましくも寂しい気持ちで見つめながら、尚哉は缶ビールを開けた。
「まぁ……ブラコンぐらいね。所詮兄弟だし」

 部屋に入ると要は水無月をベッドに放り投げ、そして無造作にベッドの下に布団を敷いた。
「お兄ちゃん……一緒に寝ようよぅ」
「ダメだ」
「どうして……今日だけ……」
 要は出来れば水無月の温もりを感じて眠りに就きたかった。だがまたあの悪夢を見た時に、側に水無月が居たら無意識に何かをしてしまいそうで怖かった。

 折角要に会えた上に同じ部屋に二人きりという空間で、水無月の身体は興奮で体温がどんどん上昇してきた。
 電気を消され、暗い中でも要の姿がはっきりと見える。
 水無月はそっとベッドを降りると、横向きに寝る要に近づき、そして首の匂いを嗅いだ。鋭い美しさは健在で、しかし昔のような剥き出しの鋭さは無く刃物が何かに包まれているような感覚だった。身体が大きく成長したせいか、前のような中性的な美しさは男らしさに溶け込んでまた別の色気が増していた。
 要の纏う妖艶な香を嗅いだ水無月は途端に下半身が痛い程腫れ上がった。
 以前の様に要に組み敷かれ、脈打つ熱い肉棒で本能のままに突かれたいと今日の日までずっと思って過ごしてきた。
 何かに取り憑かれたように瞳をトロンとさせた水無月は、そっとふっくらした肉厚の唇を要に近づけ、耳たぶを口に含んだ。
「おい」
 半ば呆れたような声の要を無視して、水無月は小さな柔らかい要の耳たぶを口の中でペロペロと弄ぶ。
「ミナ!」
 要は叱るような声で水無月の名前を呼ぶと、顔を引き離した。
「や!」
 水無月はオモチャを取られた子供のように駄々を捏ねて要にしがみついた。
 我慢が限界にきていた水無月は要の手を取ると、それを自分の下半身に擦りつけ始めた。
「にい……ちゃんっ……ハァっ」




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悪魔と野犬ノ仔 30話

「弟?」
「ああ」
「そう……別にいいけど……」
「ちょっと変わってる奴だが、あまり気にしないでくれ」
「あ、うん……でもどんな子か楽しみだな」
「俺も……暫くぶりだから……」
 要はそう言って優しく顔を綻ばせた。
「へぇ……要ってそんな顔するんだね」
「何が」
「優しい顔……ちょっと惚れそうになる」
 要はいつもの素っ気ない表情に戻ると、そのまま自室へと戻って行った。

 週末の朝、要は近くの駅に水無月が到着するのを待っていた。
「要兄ちゃんっ」
 電車が乗客を大勢降ろすと、その中から一際目立つ水無月が走って来た。水無月だけが浮き出て来ているような不思議な空気とその愛らしい容姿に周辺の人の視線が水無月に集中した。
 要はそれを避ける様に水無月の腰に手を回すと、そのまま足早にアパートへと向かった。
「ったく……だから嫌だったんだ」
「えっ……何がっ……僕、何かしちゃったの?」
「違う。いいから、着いたらゆっくり話すぞ」
「う、うん」
 要は水無月の担ぐ大きな荷物を無言で取り上げると、それを軽々と方手で背負いサッサと先を歩いた。
「お兄ちゃん、また背伸びたね! 大きいね! 180センチくらい? 僕はもうあまり伸びないみたいだけど、でも僕、髪とか伸びてねっ……でもお兄ちゃん髪切ったねっ」
 興奮するようによく喋る水無月は高揚して頬が赤らんでいた。脈絡のない話し方が可愛い。
 さすがに放ったらかしにしていた要の髪は長髪になってしまったので、それでは弟と会うのに驚くだろうからと尚哉に連れられて髪を久々に切って貰った。
 アパートに着くと、気を効かせた尚哉は出掛けていた。
「ここ……?」
「ああ」
 水無月は中に入ると、尚哉の部屋以外一通り匂いを嗅いで回った。
「お前、動物看護士になるって?」
 落ち着かない様子の水無月に要は飲み物を用意しながら聞いた。
「うん、なる」
「なるにはいいが、別に東京のスクールじゃなくてもいいだろ」
 要は飲み物を机に置くと、水無月の座るベッドの横に自分も腰を掛けた。
 水無月は見事、根性と努力で高等学校卒業程度認定試験に合格する事が出来た。
「僕、兄ちゃんと一緒にいたい」
 要は漸くきちんと正面から水無月を見返した。
 前と違って髪は伸び、表情が豊かになったお陰か、柔らかくなった目元とふっくらとした頬が愛らしさを一層引き立てていた。
「山で怪我した鳥とかいたんだけど、僕何も出来なくて……お母さんが僕とか怪我した時舐めてくれたから同じようにしようとしたら、今のお母さんに怒られたの。ちゃんとした治し方があるから、勉強しなさいって」
「そうか」
 意思を持った水無月の目は力強く今までにはない輝きを放っているように見えた。要にはそれが眩しくて目を逸らしたくなった。
「兄ちゃん……兄ちゃん……」
 水無月は急に甘えたように要に縋りつき全身で会いたかったとでも言う様にしがみ付いた。
 要は水無月の顔を両手で包み込むと、瞼や頬に唇を落とした。
 水無月は甘くて良い香りがした。愛でるつもりで落とした要の唇からは、無意識に赤い舌先が水無月の白い首筋を這っていた。
「あ……ん」
 要は水無月の着る薄いTシャツから突起している乳首を摘まみ上げた。
「あっ、あんっ」
 思わず息が上がった水無月は桜色の薄い舌先を要に差し出した。要はそれをゆっく吸い取ると、軽く遊ぶように甘噛みをしてやった。
 水無月は気持ちよさそうにギュッと目を瞑って要のシャツを掴んだ。
「ただいま~……あ、弟くん来たんだ?!」
 玄関の戸が開くと、尚哉の声が響いて要たちはさっと唇を離した。




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悪魔と野犬ノ仔 29話

 尚哉の身体をよく見ると、同じような蚯蚓腫れは手首にもあった。
「おい、見せてみろ」
 無理矢理服を剥がそうとする要に、尚哉は酷く抵抗した。
「嫌だよッ! 止めろって! 何で要に見せないといけないんだッ」
「いいから見せろッ」
 要の身体は嫌がる尚哉の手首を捉え、強引にベッドに仰向けに押し倒された。
「止めてッ……見ない……で……」
 尚哉の服を取り去ると、全身縛られた縄の跡が生々しく浮かび上がっていた。その他にも太股の付け根には火傷の跡や内出血して腫れた臀部も痛々しく白い肌に鮮明に残っていた。
 尚哉は顔を赤くしてギュッと自分の身体を隠す様に抱き締めて横を向いた。
「お前、これ誰にやられたんだ……彼氏か?」
「は?! 彼氏なんていないよッ」
「じゃあ誰だよ」
「誰って……知らないよ」
「は? 知らない奴に犯されたのか?」
「まあね」
「レイプか?」
 尚哉は要を睨みつけると服を投げつけた。
「レイプみたいだけどレイプじゃないよッ。それでお金貰ってんだからいいの!」
 尚哉は布団を引っ張ると自分の身体を隠すように覆った。
「バイトって……お前AVやってんのか」
 尚哉は要の目を見れなかった。まさか気にするなんて思ってなかったからだ。気にされた途端、とっくに消滅していたと思っていた恥ずかしさと気まずさが襲っていた。
「何だよ……今更……。別にそんなの、気にしないのが要だろ……」
 要は少し溜息をついて髪をかき上げた。
「そうだな……。別に気にしなかった……けど、お前、きつそうな顔してたから」
「別に……疲れただけだもん」
「お前さ、そういうの本当はあんまり好きじゃないだろ。本当に好きな奴は傷を見て更に喜ぶもんだ」
 尚哉は顔を布団に押し付けて「うるさい」とくぐもった声を出した。
「傷、薬塗ってやるから見せろ」
 要は洗面所に行くと薬を取って来た。
 布団に潜り込もうとする尚哉を捕まえると、無理矢理薬を塗ろうとするが尚哉は異常にそれを嫌がった。
「止めてよッ……離せッ……その気も無いくせにッ……優しくすんなッ」
「あ? その気ってなんだ……いいから黙って大人しくしてろッ」
「じゃあッ……大人しくさせてみろよ! 言っておくがな……さっきまで知らない男三人に突っ込まれまくって、精液で全身ベタベタだったんだからなッ」
 要は殺気だった目を鋭く尚哉に向けると、尚哉はその一瞬で殺されるのではないかと思える恐怖で身体が固まった。
 そして要の顔が近づくと、ゆっくりと唇が塞がれた。
「んっ」
 嫌がって首を左右に振ろうとしても、驚く程優しく絡まってくる舌先は甘くて涙が出そうになった。
「いい子だ」
 唇を離した要は大人しくなった尚哉の傷に手早く薬を塗ると、服を着せた。
「おい。ここだけ大人しくなってないな」
 要は硬く反り立った尚哉の下半身を意地悪な笑みを浮かべながら指で弾いた。
「うるさいっ……要がっ……あんなキス、するから……」
「ただの同情だ。勘違いすんなよ」
「知ってるよ……だって要は……」
 尚哉の話しを遮るように、要の携帯電話が机の上で鳴った。
「はい……あ? ちょ……待てって! それは無理だ! は? 何言ってんだそんなのもっと駄目に決まってんだろ!」
 激しい言い合いをする要の会話を尚哉は少し不安気に見つめていた。感情的になる要は初めてだった。そんな物珍しそうな尚哉の視線が気になったのか、要は自室に入って電話を続けた。
 暫くして要は電話が終わると、再び尚哉の所へ戻り頭を抱える様にして深い溜息をついて椅子に座った。
「どうしたの」
「悪い……もう一人、この部屋に住まわせてやってもいいか?」
「え……? 誰?」
「俺の、弟なんだ」





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悪魔と野犬ノ仔 28話

 東京に戻ってからあの生々しい現象は現れなかったが、それは時折夢に出てくるようになった。
 それはノイズ掛っており、丁度昔の映らないテレビチャンネルの白黒画像のような映像が淡々と流れていた。その中に、あの時見えていた映像が不気味なノイズに混じって見え隠れする。早く目覚めたいのに、まるでテレビの中から出られなくなってしまったかのように身動きが取れない。金縛りにあっている状態に近いのか、自分が寝ている状態もちゃんと把握出来ているが動けない。尚哉が部屋を動く気配も分かるし、話声も聞こえてくる。だが瞑ったままの瞼の裏に映し出される映像をどうしたって視界から隠す事が出来ないでいた。疲れ果てて起きると、身体中に冷たい汗がじっとりと纏わりついている。
 映像は日によって見た事のない背景を映し出す事あった。
 知らない部屋の隅、知らない犬。知らない椅子の足――。

「要……大丈夫? 最近、寝苦しそうだよ?」
 睡眠不足で顔が白くなっている要の顔を心配そうに覗き込んできたのは尚哉だった。
「あ、ああ……いや……うん……正直ちょっと参ってる」
 要が弱音を吐くのは初めてだった。それには尚哉も驚いたが、それよりもこの尋常ではない要の状態に本気で心配をした。
「ねぇ、何かあったの? 病院行く?」
「病院……」
 何の考えもせずにただ尚哉から聞こえてきた単語を口先で繰り返した様な返事をした。
「要さ、こんな時にアレなんだけど、大学とかさ、どうするの?」
「……別に……どこでもいい」
 要に将来の夢はなかった。何をしたいのか、何の為に生きているのか、ずっと分からないまま生きてきた。そういう気力を自分の中の何かがずっと吸いとっているような感覚に苛まれてきた気がする。
「そう……。俺、大学に行かないで働こうと思ってるんだけどさ……良かったら俺と一緒に住まない?」
 尚哉はそっと要の長くなった髪に指を入れた。サラサラと黒い絹糸のような髪からシャンプーと混じった媚薬のような香りがして、尚哉は思わずそこに鼻先を埋めた。
「要は俺が好きだって言ってもきっと信じないよね」
 要は動かずにじっとしていた。
「要に固執した好きっていうのはないけど……結構気に入ってるんだ。何か放っておけないし。別に何でもいいならさ、一緒に住もう。ね? 俺、要の顔好きだし」
「……何でもいいよ」
「本当?……嬉しいっ」
 尚哉はギュッと要の背中を抱きしめ、そして黒い髪をかき分けて首筋にキスをした。
 尚哉の唇は段々と移動し、要の前に移動すると足の間に入り込んだ。
「ねぇ……舐めていい?」
「……」
 要は何も考えていないような眼で、ただ尚哉のする事を見ていた。尚哉はそんな空虚な要に興奮し、その空っぽな要の目を見つめながらジーンズのチャックを下ろした。
「要のコレ……好き」
 尚哉は要の肉棒を頬張ると、クチュクチュと卑猥な音を立てながらそれを硬く大きく育てた。
「はぁっ……大きくて熱い……」
 尚哉は自分の肉棒も取り出し、要の味に興奮しながら自分でも扱いた。そのうち我慢出来ずに勝手に放ってしまった尚哉は、射精しない要の肉棒を暫く頬張って遊んでいた。
「腹減った」
「え?」
 要は突然ガタリと立ち上がると、そのまま服を脱ぎシャワーを浴びるとサッサと食道へ行ってしまった。
 そんな自分を眼中にも入れない要に、尚哉の心臓は少し早いテンポで音を立てていた。

 親を安心させる為と、今の社会で一応有利な立場に立っておくのに越した事は無いと判断した要は取り敢えず大学へと進んだ。
 成績の良かった要は受験も淡々とこなし、有名な大学の理工系へと進んだ。というのも、取り敢えずは人関わる仕事には向いていない事を考慮して、IT系のSEなら自分でも出来る仕事なんじゃないかと考えたからだ。
 大学へ通いながら、帰る家は都内の割と大きなアパートだ。羽振りのいいバイトをやっているらしい尚哉と、情報系の技術を使った要のバイトの金額で余裕のある暮らしは出来ていた。
 あれからたまに悪夢は見るものの、これといった奇怪な現象は起きず普通の暮らしに支障は出ていなかった。
 水無月は未だ、東京に出て要の側に行きたいが為に頑張ると言って勉強を続けているようだった。
 最後にあった日からまた随分と会っていない。
 何度か電話で話す度に、水無月の東京に出てくる意志を変えようとはするが、頑なに頑張ろうとする思いに戸惑いと困惑は募っていた。
「ただいま……」
 深夜に帰って来た尚哉は精魂尽きた様な顔でフラフラとベッドへ辿り着き、そのまま横たわった。いつもならそのまま無視している要だったが、ふと見た尚哉の首が赤く腫れあがっているのが見えた。
「お前、それどうしたんだ」
 その言葉に驚いた尚哉が「え?」と首だけ要の方を向いた。




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悪魔と野犬ノ仔 27話

「いッ……てぇ……」
 要は思わず両手で自分の頭を抱えた。
「お、お兄ちゃん……どうしたの? 痛いの?」
「わか……ねぇ……痛ぇ……」
 規則正しい心臓の脈とは反対の、気持ちの悪い不規則なリズムだ。
 要は頭を抱えていた両手をゆっくりと離し、何となく掌を見た。
 そして全身の血液が一瞬で凍りつき、無意識に手先から震えが始まった。
 要はべっとりとヘドロのような黒いものが自分の掌から腕にかけて覆っているのが見えた。それは生温く、ズルズルと粘着質で悪臭を放っていた。
 耐えがたい気持ち悪さはその見た目だけでなく、要の精神に直接嫌悪感を抱かせるものだった。まるで自分の悍しいもの全てが形になって外に沁み出てきたかのような戦慄に思わず叫び声を上げた。
「うわァァアッ」
 必死で両手をについている黒いものを掴んで取り払おうと爪を立てた。

――何だコレ?

――汚い。

――気持ち悪い。

――汚い。

――汚い!!

「お兄ちゃんッ!!」
 水無月の声と床に頭をぶつけた衝撃で、要は一瞬何が起こったのかが理解出来なかった。
 震える両手をおそるおそる上げて見てみると、黒いものなど一つもなく、自分の爪で傷つけた引っ掻き傷が赤く血の筋を何本も作っているだけだった。

(何だ……今の……)

 現実的な悪夢を見た時のような気持ちの悪さに、気のせいだった安心感と、そのリアルな感触に未だ要の手は震えていた。
「お兄ちゃん……大丈夫なの……」
 泣きそうな顔で水無月がそっと丸めた右手を要の膝の上に乗せた。その軽い重みに安堵し、要は額に流れる冷たい汗を手の甲で拭った。
 落ちついた後は何事も無かったかのように要に異変は見られず、疲れが溜まっていたのかと一先ずは気にせず東京へ戻った。
 相変わらず煙たい匂いの充満する街に最初は辟易するが、そのうちに鼻が麻痺して何も思わなくなるのが不思議だ。
 狭い自室のドアを開けると、夕方だというのにだらしのない格好で要のベッドの上で漫画を読む尚哉の姿があった。
「あっ! 要帰って来た!! お帰りィィッ」
 要は飛びついてきた尚哉を抱きとめたが、頭痛は全くなかった。
「ねぇお土産は?」
「ねぇよ」
「えーっ。じゃあただいまのチュウは?」
「ねぇって。どけよ、重い」
 要はチラリとゴミ箱に目線をやると、その中にはしっかりと使用済のコンドームが捨てられていた。
「お前、俺のベッドでしてねぇだろうな?」
 要が嫌悪感たっぷりの目で睨みつけると、纏わりついていた尚哉が少し気まずそうな顔をして離れた。
「してないもん、要のベッドでは……。だってしょうがないじゃん。寂しかったんだもん」
 要はそこまでの話しに興味を示さずさっさと荷物を整理しだした。
 尚哉は自分のベッドで横になりながら要の行動をジッと見ていた。
「ねぇ、要」
「……」
「何かあった?」
 要は一瞬手を止めた。朝見た真っ黒い自分の手を思い出してギュッと拳を握る。
「あ?」
「何か……雰囲気違う。恋人にでも会ったとか? ていうか、要、恋人いたっけ?」
 今度は脳裏に自分の下で可愛く喘ぐ水無月の姿を思い出した。
「……」
「全く……いつも殆ど僕の質問には答えてくれないんだ、要は。まぁいいけどっ」
 気紛れの猫はつまらなくなったのか、足音をあまり立てずに部屋を出て行った。大方別の男に抱かれに行ったのだろうと要は予想し、これで暫く静かになったと溜息をついた。




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悪魔と野犬ノ仔 26話

 次の日は水無月の体調を見て休ませる事にした。
 水無月は必死に大丈夫だから要と一緒に外へ行くと匍匐前進をしながら騒いでいたが、要に命令されしぶしぶ療養する事に納得した。
 外に出ようと玄関を開けると、丁度井戸端会議をしていた母親と近所に住むおばさんに出くわした。
「どうも。ご無沙汰してます」
「あんらァ。要ちゃん?! モデルさんでも来なすったのかと思ったわァ。大きくなってェ」
 東京で学んだ“人の好意の交わし方”ですり抜けようとするが、ここの田舎のおばさんには通用しなかった。「まぁまぁまぁ」と嬉しそうに両手で手首を掴まれては捕捉されたも同然だった。
「前はねェ。何だか反抗期みたいな感じだったけんども、まー見てごらんなさいなっ。こーんなに立派な美男子になって、礼儀も正しくなってェっ」
 母親は嬉しそうに「いいえぇ、そんなぁ」と謙遜しながらも笑っていた。そこから何だかんだと十五分程経った時だった。
「あ、そうだ。奥さん持って来た回覧板にも書いてあるんだけどねェ? ここいらで数頭の野良犬がウロついているらしいのよォ。キャンプ場も出来たし気を付けないとねェ。怖いわねェ」
「キャンプ場?」
 要はおばさんの頭上から声を出した。
「そうなのよ、そう言えばあなたに言ってなかったけど、あの原っぱにキャンプ場が出来たのよ」
 母親は少し申し訳なさそうに要に言った。
 要は少し強めにおばさんの手を掴むと、「失礼します」とどけて原っぱへ急いだ。
 先程おばさんの言っていた「野良犬」というのも気になった。
 野良犬たちは人間の住む街にはあまり近寄って来ない。新しく兄弟たちが別グループを作って街に下りて来たのかと心配になった。
 原っぱはいつも要が水無月を散歩に連れてくる場所だった。母犬やその兄弟たちと再会を果たした思い出深い場所だ。そしてその後も待ち合わせでもするようにその場所に向かった大切な場所だ。
 辿り着いた野原には沢山のコテージが立ち並び、バーベキューの用意をする若者がちらほらいた。
 風が吹けば海を漂う海藻のように美しく揺れていた草は短く刈られ、殆どが土と砂利で整備されていた。
 そしてあちこちに散らばるのは白いものは花ではなく、ゴミだった。

「何だこれ……」

 要はしばし唖然とその様変わりを眺め、そしてその足で家へと戻った。時間は優に一時間を超していた。
 さすがに玄関先にはもうおばさんの姿は見えなかった。
 部屋に戻ると、要のベッドの中で参考書を読んでいた水無月がヒョコっと顔を上げた。
「お兄ちゃんっ」
 要はソワソワと布団の中で喜ぶ水無月の頭を撫でながらベッドの上に座った。
「ミナ……お前、あのキャンプ場に行ってるのか」
 水無月は困ったような、ガッカリしたような表情で視線を床の方へ落した。
「前、見に行ったけど最近は勉強してて行ってない。お母さんたちとも、最近全然会ってない……行っても会えないし……人、いっぱいいるし」
 水無月の言うお母さんとは母犬の事を指している。
「もうあそこで散歩は出来ないな」
「うん……さびしい……。でもたまに山には行くよ。そのうち登山用に整備するって言ってたけど、まだあのまま残ってるから」
「そうか……」
「お母さんたち、大丈夫かな?」
「……。身体良くなったら会いに行ってみるか」
「うん」
 水無月は頷きながら要の腰にキュッと抱きついた。

 数日後、キャンプ場に着いた要たちは案の定いくら犬たちを探しても早々に見つからなかった。その後も休みの間に何度か訪れたが、まだ出来あがっていない整備途中のキャンプ場は若者と工事で騒音が酷かった。この騒音の中では犬たちはなかなか出て来ないだろうと要は諦め始めた。

「ミナ。俺はまた東京に戻るけど、また戻ってくるから」
 要は東京に帰る当日に部屋で荷物を詰めながら水無月に言った。
 途端に水無月の大きな瞳に涙が浮かび、キュウキュウと鳴き声を部屋に響かせた。
 水無月は「寂しい」とか「嫌だ」とかは一切言わず、ただ只管に鳴き声を出しながら要の背中を抱きしめた。
 要はいっそ水無月を連れていきたい衝動に駆られて、振り向きざまにその桜色の唇を塞いだ。
「んんっ」
 切なげな甘い声が水無月の鼻から漏れ出ると、要の体温が上がった。
 だが、途端にまた釘を刺された様な痛みが要の頭の中に響いた。




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悪魔と野犬ノ仔 25話

「ふぅっ……ふぅっ……」
 汗ばむ白い水無月の背中は息をする度に艶めかしく光る。

(ああ……もうダメだ)

 要は後ろから手で水無月の口を塞ぐと、力一杯鎖を後ろに引き、同時に残りの肉棒を奥へ突っ込んだ。
「んんんーッ、んんんーッ」
「しー……。下に聞こえる」
 水無月は耳元で囁かれながらもう一度熱い棒を引き抜かれ、そして再度奥へと突き刺された。
「やあぁ……っ」
 何度もゆっくりと抜き挿しされていると、水無月の身体の奥から疼くような気持ち良さの波が襲ってきた。鎖をグッと引かれ、首が締まる度にその波は大きくなってくる。
「ハッ……いっ…イィっん」
 少し小さくなっていた水無月の肉棒もいつの間にか硬く反り立ってきていた。
 ぐるっと器用に仰向けにされた水無月は下から要の顔を見た。要は少し汗ばんで恍惚とした顔をしていた。
「お兄ちゃん……気持ちぃの?」
「いいよ……すごくいい」

(ずっと……こうしたかった)

 要は水無月の足を持ち上げると壁に押し付ける様にして腰を高く上げた。
「うぁ……っ」
「ほら。自分が犯されてる所よく見ろ」
 上から肉棒が水無月の蕾に入っていくのが感覚と視覚で認識出来る。
「あぁっ…は……っん……太いィっ」
「ミナ」
 要が自分の舌を出して水無月の舌を要求してきた。
 水無月は素直に自分のピンクの舌を差し出すと、それを愛撫するように要の舌が絡まってきた。そして要は水無月の尻を両手で思い切り掴みながら激しく腰を動かした。
 柔らかい舌の愛撫と、叩きつけられる腰のギャップによる快感に水無月の肉棒から精子が飛び出した。
「おにいちゃあっ……でるぅぅっ……でるぅぅ」
「もう出てるだろうが」
「ちがっ……もっと、イクうぅんッ」
 要の腰が激しさを増すと、首輪から下がる鎖がジャラ、ジャラと妖しい音を立てベッドの軋みと共鳴した。
 要は下から手を滑り込ませ水無月の尻を掴む事でお互いの身体を固定させ、激しくピストンを繰り返した。要の硬い尻の筋肉が引き締まり、腰が波打つようにいやらしく動くのを見て、水無月はまた少し白い液体を飛ばした。
 水無月の前立腺辺りは要のカリ部分で擦られ、膨張するようにその快感を高めていった。体内から吹き出すような気持ち良さで目の前がチカチカし出し、内股が勝手に震えだした。
「お兄ちゃああん……! イ……っイクっ、イクッ、アァァァーッ」
 水無月の中の大きくうねるような動きに、要も我慢が出来なくなった。狂った様に上下左右の段々になっている襞に肉棒を擦りつけ、水無月がオルガズムを引き起こしている中に自分も射精をした。

「お前、うちの親が一度寝たら起きない体質だったからいいものの……思い切り叫びやがって」
「ごめ……な……さぃ」
 水無月は幸せそうに謝ると、そのまま深い眠りについた。




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悪魔と野犬ノ仔 24話

「あっ……ん……悪くない……よっ」
「じゃあどんなビデオを見せられたんだ。言ってみろ」
「ふ、普通の女の人としてるやつ……とか」
 要は頭にしがみついてくる水無月の両手首を纏めると腰の後ろに固定し、次に艶やかに光る肩に歯を立てた。
「男同士のも見たのか」
「んんっ……見た……よ」
「じゃあそのお友達も男同士が好きな奴なんじゃないか」
 要は尖ったピンク色の乳首を前歯で挟むとゆっくり引っ張り上げた。
「あっ…あっ…アッ」
「何かされたのか」
 要はもう片方の乳首を爪で挟み、同じようにゆっくり引っ張り上げる。
「アアッ……されて、ないよぉ……ちゅう、してみようかって、言われたけど、ぼく、お兄ちゃんとしたいけどどうしたらいいか相談したら、そういうの、言ってこなくなった」
 水無月の言葉を聞いて要は思わず吹き出した。
「あっはっは、そりゃあ……そうだろうな。今でも仲が良いのか?」
「ん……トモダチだよ。がんばれって男の子同士のビデオを貸してくれるようになったの」
「そうか……クク……良い友達だな」
 愉快そうに笑う要に焦れた水無月は懇願するような表情で口を開いた。
「ねぇっ、ぼくのお尻にも、入れてよお兄ちゃんっ」
 その言葉に、要は悪魔のような妖艶な笑みを浮かべて水無月を力づくでひっくり返した。
 水無月はベッドにうつ伏せ状態で押さえつけられると、再び全身がゾクゾクと興奮で粟立った。
「もう、そのつもりだよ」
 突然吐息混じりの要の言葉を後ろから耳の中へ入れ込まれ、既に手を離されていた肉棒の先からほんの少し射精してしまった。
「あ……あ……少しイっちゃったよぅ」
 ベッド脇に放り投げた鞄からローションを取り出した要はそれをたっぷりと手に垂らした。
「声を掛けるだけでイクなんて、思ってたよりエロい身体だ」
 要はローション水無月の蕾に丹念に塗りつけ、慣れた指つきで括約筋を柔らかく解し始めた。
 最初は何度も強く閉じようとしていた動きも、だんだんと意思が弱まってきたかのように柔らかく要の指を飲みこむ様な動きを見せ始めた。もう指だけでは収まらない程の興奮した水無月は腰を上下に揺らす。
 だがそんな焦れる水無月を余所に、要は思い立ったように再びベッドの下に手を伸ばして何かを探り当てると、意地の悪い笑みを浮かべてそれを見せた。
 水無月の目の前にジャラリと音を立てて垂れ下がったのは鎖の付いた首輪だった。それはかつて散歩の時に水無月に付けられていたものだった。
 それを黙って首に付けられると、水無月の興奮は最高に高まった。
「お前は、俺のものだ」
 グッと鎖を後ろに引かれ、首がクンと上がって喉が軽く締め付けられた。
「はぃ」
 水無月の亀頭からはタラタラと大量の液体が溢れて布団を濡らす。
 要はローションを自分の肉棒にも塗りつけると、水無月の腰を上に持ち上げた。
「あっ……お兄ちゃんっ……入れるの?……入れるの?」
「そうだよ」
 布団を掴んでいた水無月の両手首を要に掴まれると、そのまま手首を後ろに引っ張られた。それと同時に熱い弾力のある太い肉棒の先がグッと水無月の蕾に押し付けられた。
「あ……うそ……太……っ」
「思ってたより太くて驚いてるのか?」
 身体で感じるその太さは予想以上だった水無月は逃げるように腰を左右に振るが、掴まれた両手は容赦なく後ろに引っ張られ、それと比例して肉棒が奥へ刺さろうと前進してきた。
「いやあっ、こわいっ」
 水無月の言葉に要の何かが反応したのか、脳ミソの中でパチンッと電気が弾けた様な激痛が走った。
「っつ……!」
 要が頭を押さえると、水無月がその異変に気付き心配するように後ろを振り返った。
「どうしたの……? 大丈夫? いたいの?」
「いや……何でもない。……お前、怖いか?」
「……う……ん。怖いけど……でもすごくしたい」
「そうか」
 水無月と話しているうちに頭痛は治まり、要は求めるように後ろから覆い被さるようにして水無月の唇を吸った。
「本当だ……お前のケツん中、喜んでる」
「や……やん」
 水無月の意識は閉じようとしてるのに、身体が勝手にその熱い肉棒を中へ引き込む動きをしている。括約筋はリズムを作る様に一旦緩く閉じ、そして再び開くと奥の襞が要の亀頭に絡みついて引きずり込む。
 ただただ大きく太いものが体内に埋め込まれる感覚で恐怖心があった水無月だが、要がゆっくりと時間をかけたお陰で半分まで入る頃には少しその苦しさにも慣れた。




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悪魔と野犬ノ仔 23話

「お兄ちゃんの……出してもいいですかっ……」
「敬語、使えるようになって偉いな。いいよ」
 今まで要は水無月に対して色々してはきたが、自分に対してさせた事はなかった。だがここまで求められたのは初めてで理性を保つつもりは今、消えた。
 水無月は要の興奮して大きくなったモノをこんなに間近に見たのは初めてだった。
 友達が出来てからそういった類の知識を膨大に得るのにそう時間はかからなかった。そこは人間としての本能からなのか、柔軟に吸収し、理解していった。最初はショッキングだった真実の数々は、日を追う毎に甘く刺激的な欲求へと変換されていった。
 今まで要と一緒に歩いた草むらや、過ごしてきたこの部屋で、卑猥な妄想は膨らむばかりになった。そして今までされてきた気持ちのいいだけの行為は、それまでなかった胸の熱くなるような感情ともに何度もフラッシュバックされた。
 目の前に現れた自分よりも一回り大きな男性器は猛々しく赤黒い牙を向くようにそこにあった。
 水無月はそれを指先で掴むと、熱くて火傷をしそうになった。
「あつッ」
 ずしりと重たい要の肉棒は水無月の方を向いて涎を垂らす様に透明の液体をダラダラと垂らしていた。綺麗で冷酷な顔に似合わないこの本能の化身のような肉棒に、水無月は異常なほど興奮した。
 要が後ろから水無月の白い太股を撫でる。
「はんっ」
 水無月の肉棒がビクンッと跳ねて自分の腹に当たる。
 そしてその赤黒く熱い肉棒に舌を伸ばして一舐めした。塩っぽい味に少し驚いて舌先を離すと、銀色に光る愛液の糸が伸びた。
 要は優しく水無月の腰を撫でる。それがまるで「頑張ってごらん」とでも言っているように感じられ、水無月は大きな口を開けるとゆっくり頬張った。
「んんっ」
 口を思い切り開けてやっと入る大きさのそれは、頑張っても三分の一しか入れられなかった。それでも入れてからどうしていいか分からずいると、要が口を開いた。
「俺の真似をしてごらん」
 そう言うと要は水無月の腰を上げ、先端を赤くさせた肉棒を吸い込んだ。
「ふっぅう……あっああぁんッ……気持ちぃぃぃっ」
 初めて感じる全身の溶けそうな程の快感は水無月の力を奪った。
「ほら。寝てないで同じようにやれよ」
 震える全身をやっと起こし、自分がされている事を要にも行った。歯を立てず、口内から出したり入れたりと吸引力を駆使して頑張った。要の気持ちいい所は念入りに舌で攻め、玉の方にも性感帯が沢山あると知った。
 水無月はとっくにイきかけていたが、要に強く根元を掴まれていてイけないでいた。
「ひぃん…やあ…お兄ちゃ……て、はなしてぇっ」
 そう言う度に要は意地悪く水無月の蕾に舌先を伸ばし、内側へ入り込んで来ようとする。
「いやっ、いやっ、イクぅぅんっ」
 要は手を伸ばし立ち上がっている水無月の乳首を左右に嬲った。その度に水無月は要の腰に爪を立て、肉棒の側面に吸いつきながら尻をビクつかせた。
 射精すら要にコントロールされる快楽で、水無月は幸福感で満たされていた。
「お兄ちゃぁ……お兄ちゃぁんっ……ああんっ」
 水無月は顔を要の顔の方へ向き直ると息を荒げてしがみ付いた。
 少し落ち着くまで要に抱き締めて貰っていると、少し興奮のピークが治まってきた。
 そして水無月は思いついたように要のTシャツの中にモゾモゾと潜り込んだ。
「おい、何してんだお前」
 要の声がすると、水無月は子猫のようにTシャツの首を伸ばして顔ひょっこり出した。
「Tシャツが伸びる」
 水無月は要の文句を無視して、今度は両手を袖口に出してしまった。これで完璧に一つのTシャツを二人で向かい合わせで着ている状態になった。
「兄ちゃんとピッタリくっつけたの。うふふ、気持ちいい」
 嬉しそうに笑ってペロペロと要の唇を舐める水無月に、要は軽く呆れた様な溜息をついてTシャツを脱いだ。
「あっ! やだぁっ」
 先程の状態が余程気に入っていたのか、水無月はTシャツを脱ぐのを嫌がった。
 要は言う事を聞かない水無月の腰を引き寄せるとそのままベッドに組み敷いた。そして水無月は身体に纏う布を全て剥ぎ取られ、上から舐め回す様に視姦された。
 水無月は段々と恥ずかしくなって、何となく手を胸元へ持っていった。
「見てるだけなのに乳首、立ってきたぞ」
「だって……兄ちゃんの目、いいんだもん」
「お前随分と気の効いた事が言える様になったな……どうせ悪い友達が沢山出来たんだろう」
 要は水無月の細い首筋に歯を立てた。




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