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それから43話

 淳平が錯乱して無理矢理に沢村渡を抱いた日から、淳平は腫れ物にでも触れる様に渡に接していた。
 渡が会社のオフィスで事務仕事をしていると、営業から帰って来る淳平を見かける度にトクンと胸が高鳴る。淳平だけが浮き出て色鮮やかにすら見える。淳平が営業に直行直帰の時は逢えない分、尚更逢えると嬉しい。
 だが、ここの所ずっと会社では淳平は渡に目すら合わせないようにしていた。

 夜は決して自分の近くで渡に寝ない様に言っていた。渡がいくら偶にはベッドで寝てくれと頼んでも淳平は頑としてソファで横になった。
 今は自分の精神状態を信じられなかった淳平は、寂しさのあまり渡に甘えそうになるのを避けていたようにも見える。
 渡は、淳平に酷い仕打ちを受けたにも関わらず、何事も無かったかのように振舞っていた。毎朝いつものふわりとした可愛い笑顔を向けて得意の洋食を作ってくれる。
 休みの日や時間の余った時でも無気力の淳平は、特に外出もせずに一日中ボーっとタバコを吸っていた。

「身体、悪くしますよ。そんなにタバコを吸っていては」
 渡はいつも心配そうにそう言うが、決して無理に辞めさせようとまではしない。恋人でもない自分がそこまで言う権利がないとでも思っているのか、それとも優しい性格だからかは分からない。
 だが、渡は淳平を決して一人にはしなかった。

 そろそろ冬の気配がしてきた。いつの間にか淳平は見た事のない長袖を着ている事に気付いた。それはきっと渡が淳平の為に買ったものだろうと予想できた。
 その長袖を見た時、淳平にふと考えが過った。
「沢村」
 夕食の用意をする渡のいるキッチンに向かってソファから淳平が話しかけた。
「はい?何ですか?」
 滅多に話しかけられる事のない渡は、一体何事かと一旦手を止めて淳平の元へ足早に移動した。
「明日の日曜、どこか行くか」
 その唐突な提案に渡は一瞬淳平が何を企んでいるのかとつい身構える。
「何故ですか、急に」
「ん?いや、別に嫌ならいいんだが・・色々と世話になってるし、どこか行きたい所にでも一緒に行くかなと思って。嫌か?」
 そう言って渡の顔を下から見上げた淳平の顔にドキッとする。そして嬉しさと信じられない想いで心臓が跳び跳ねる。
「行きます!行きたいです!先輩と一緒なら、どこでもいいです!」
「そうか・・なら映画でも見に行くか」
「はい!」
 嬉しそうに返事をした渡は淳平の顔の位置に自分の顔を揃える様に膝を付いてしゃがみ、ソファの横に正座した。その様子があまりに可愛かったので、淳平はふっと笑みを浮かべてそのふわふわの髪の間に長い指を入れ込んで頭を撫でた。
 渡はその感触にゾクッと感じてしまうと、顔を赤らめて目を逸らした。淳平はハッと気付いて指を抜く。

「悪い。つい・・」
「いえ、いいんです。嬉しい・・です。本当は・・触って欲しいから」
 渡の顔を見ると横を向いて恥ずかしさで逃げ出しそうな顔しているのに、必死に想いを伝えようと頑張っている顔があった。
「ごめん・・」
 出来る事なら触れてやりたいと淳平は思った。だが、自分を好きだと言ってここまで献身的にしてくれる渡を弘夢の代わりになど出来ないと思ったのだ。
断られた渡は寂しそうな笑みを浮かべ、また台所へと向かった。

 次の日、久々に休みに娯楽を楽しむ為に外へ出た。濃紺のブイネックにシンプルだがフォルムの綺麗なデザイナーズのジャケットとスラックス、そして細いストールを首にラフに掛けた淳平は見違える程小奇麗に、そして格好が良く見えた。その洋服は渡が内緒で用意したものだった。あの木戸御用達の高級セレクトショップ、シェーナー・プラーツで内緒に購入したものだ。勿論渡もあそこの会員だ。
 対して渡はダボっとした大き目のタートルネックのニットに細身のブラックジーンズでシンプルに着こなしていた。そして皮の焦げ茶色のバッグを斜めに掛けている。細身の渡にはとてもお洒落で可愛らしく見える。
「そうして見ると、お前若いな」
 車を運転する淳平が渡を観察するようにして見る。
「僕、若いですから。」
 そう言いながらも淳平の運転する横顔とハンドルをさばく手から目が離せなかった。
 
 久し振りの映画は今流行りのものを見る事にした。幸いあまり混んでいない映画館はチラホラとしか観客がいない。淳平たちは一番後ろの席に座る事にした。渡は淳平の右隣へ座る。
 映画の内容はホラーサスペンスだった。なかなかの衝撃的な映像と効果音で会場の女性客は悲鳴を上げて彼氏の腕に縋りついていた。だが、同時に男性の方も怖がっている客も少なくなかった。
 渡も怖がっているんじゃないかとそっと横を盗み見ると、眉一つ動かさず淡々と無表情で見ていた。
 淳平にはそれが意外だった。てっきり、怖いと言って汗ばむ手を寄せてくる気がしたからだ。
 淳平自身はホラーなどは大丈夫だ。弘夢は怖い話が苦手だったなと思い出しているうちに、映画が頭に入らなくなっていった。
 その時渡の肩がピクンと跳ねた。映画は別に怖い場面でも何でもない。不思議に思っていると、キュッと袖を引っ張られて渡の顔を見ると、仄かに赤い顔をして困った顔をしている。

「どうした」
 内緒話をするようにそっと聞いてやると、渡が垂れた目で必死に何かを訴えようとしていた。
 話を聞こうと耳を寄せると、渡から「やっ・・」と甘い声が出て身を捩るのが分かった。
 渡の鞄は太股の上に置かれていたが、それが不自然に動いていた。鞄が大きく動くと、ずれた所から知らない男の手が渡の下半身をまさぐっているのが見えた。後ろから手が伸びている。
 淳平はカッとなってその手を思い切り払いのけて後ろを覗くと、ビックリした親父がそそくさと映画館を出て行った。
「大丈夫か?」
 そう言って渡の顔を見ると涙目で怖がって固まっている。淳平はそれを見て思わず渡の頭を抱えて自分の肩に引き寄せた。
 知らずに入ったその映画館はゲイの集まりやすい場所だった。 
 すると、渡が縋るように淳平の胸元の服をキュッと握ってきた。
「嫌なのに・・」
「え?」
 小さな涙声の渡が話し出す。
「嫌だったのに・・こんな・・僕・・っ」
 渡の股間を見た淳平は、そこが膨らんで反応しているのに気付いた。



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知らない親父の手に反応してしまった渡・・
どうする淳平!


★「それから」はすれ違った後に(全10話)の続編です。 

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それから42話

 それからの時枝の態度は別段変わる事もなく、今まで通りだった。普段通りの関心の無さ気な態度と無表情。ただ、いつも見る冷たい目線に殺気が籠っているように感じるのは、殺したい程憎んでいると言われたからか。
 弘夢は意識的に時枝と目を合わせないようにした。

 何日か振りに木戸が本社に戻ってきた。
 木戸が見慣れた自分のオフィスにカチャリとドアを開けて入ると、聞きなれた落ち着きつ艶のある声が出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。お疲れさまです」
 そこには漆黒の細みのスーツを見事に身に纏った美しい男がいた。やはりこうして客観的に見ても時枝は目の保養になる男だと思って木戸は自然と口角が上がる。
「よぉ。俺がいない間色々と面倒かけたな」
「いえ」
 半分面白がって弘夢をイかせてやれと言ったのは木戸だ。
「俺も見てみたかったなぁ、お前らの絡み」
 木戸は意地の悪い笑みを浮かべながら、デスクの上に置かれた溜まった資料を手に取る。
「手でして差し上げただけです。絡んだ訳ではありません」
 つい不機嫌そうな声を出してしまい、我ながら大人気ないと時枝は思った。
 木戸はその少し感情的になる時枝の方を振り向くと、ゆっくりと時枝に近づいた。木戸が時枝を興味深げに上から見下ろすと、少し困ったような素振りで時枝が顔を逸らした。
 そして木戸がその鋭く危険な刃物の様な目線を時枝の細い顎のラインに沿わせながらゆっくりと一歩一歩後ろに回り込む。
 木戸の眼下に細く白い時枝の項が誘うような甘い香りを放っている。
「全く、昔からよく分からない奴だなぁお前は。」
 
 木戸の低く艶のある声が時枝の項にふっと熱い吐息になって触れる。時枝はゾワリと背中が粟立った。
 時枝からは見えない筈なのに、後ろから項に突き刺さる木戸の鋭利な視線を感じて鼓動が不安定に波打つ。
 木戸が物心付いた時には、既に自分よりも小さく幼い時枝が回りにいた。そして一緒にいる執事たちに木戸の世話のやき方や、仕事の内容など色々と木戸も知らない所でも叩きこまれていたようだった。

「首・・弱いのか?お前・・」
 時枝は密かに粟立つ身体の反応を気付かせないいつもの無表情を作れている気でいた。急に図星を突かれて時枝はハッとする。
 一番知られたくない相手に自分が感じている事を悟られた事は、時枝を激しく動揺させた。
「い、いえ・・別に。何故です?」
 後ろを振り向けなかった。代わりに少し顔を横に向けて木戸の存在を視界にほんの少し入れる。
 だが同時に温かくて柔らかいものが時枝の首の側面を食んだ。
「あっ・・!」
 時枝は突然の感覚に感じたままの声を上げてしまった。みるみる頬が紅潮し、足の力が抜けてカクンッと崩れそうになると、木戸の大きな両手が時枝の両腕をしっかり掴んだ。

「初めて聞いたよ、お前の声。想像以上にいいな」
 時枝の頬に木戸のきちんと整えられた髪が触れ、ふわりと大人の男の色香漂うコロンの香りが時枝を刺激した。それは昔から時枝の好きな香りだった。木戸の顔の皮膚が時枝の頬に触れると、そのあまりに現実的に近い距離に固まりそうになる。
「や・・めっ・・あっ」
 時枝は逃げようにもしっかりと掴まれて動けない。木戸はねっとりと厚い舌を時枝の首に這わせて楽しんでいる。肉厚で熱いしたがザラリと首筋を這う度に時枝は胸元から髪先にかけてゾクゾクと鳥肌が立つ。
 ずっと見る事で想像しか出来なかった感覚だった。それは想像以上に刺激的で、時枝の身体を少しずつ溶かす毒液のようだった。
「木戸さまっ・・あっ・・お止め下さ・・お、怒りますよ!・・あっ」
 木戸はグンッと178cmはある時枝を軽々と抱き上げて、大きなソファの上にバサリと押し倒した。突如覆いかぶさるように、上から見下ろす木戸の鬼畜な顔に時枝はドキリとする。時枝は逃げようとするのに、どこかでこの状況を喜ぶ自分の浅ましい心に嫌悪する。
 だが本音はずっと自分をこんな危険な顔で見下ろして欲しかった。いつも弘夢にそうするように。
「昔から暗黙の了解でお前には手を出しちゃいけないってなってたんだよな」
 木戸は禁忌を犯す前の興奮からか、鋭い目を歓喜の色に染め上げる。木戸はそっと大きな手を上等なスーツを纏う時枝の太股を触る。時枝の柔らかくしなやかな筋肉が布越しに木戸の手に伝わる。

「おいおい。何て顔してんだよ。そそるなぁ」
 時枝は知らないうちに自分でもコントロールの効かなくなった表情でいるようだった。木戸が時枝のスーツの上着を分けて白いYシャツの上から突起した乳首に爪を立てると、時枝の首がクンッと反った。

―もう、どうにでもして欲しい・・この人に。 いや、この人だけに・・。

 その瞬間、一番聞きたくない名前が木戸の口から出てきて時枝を一気に現実へと引き戻した。
「お前も弘夢も本当に綺麗な男だ。もっと早くにヤれば良かった」
 時枝は侮辱されたようにすら感じた。時枝は身体中の血液がマグマにでもなったように、体内が熱くなっていくのを感じた。今の木戸になど無償に触れられたく無いと感じた時枝は木戸を突き飛ばした。
 木戸は、初めて冷静さを失いかけた時枝を、少し驚いたように見つめていた。
「何だ。何を怒っている?ここじゃ嫌なのか?」

(何て鈍感で救いようのないお人だ!)

 時枝は深く息を吸い込むと、直ぐに心を少し落ち着かせた。
「木戸さま。場所の問題ではございません。今まで木戸さまに手を出された執事や女中は皆使い物にならなくなっております。だから秘書にだけは手を出してはいけないと社長からキツく言われているでしょう」
「まぁ、お前は秘書って言ってもオールマイティに仕込まれた俺の最高の右腕となる奴だから、あのジジイは心配してそう言ったんだろうよ」
「ですから、こういった事はお控下さい」
 時枝は未だ加速の衰えない心臓の状態を隠しながらソファに座ってスーツの乱れを直した。
「時枝。お前はオールマイティに特化してんだから、身体の方も平気だろう?色々とビジネスでも利用してるみたいだし」
 時枝はふと服の乱れを直す手の動きを止めた。
「・・どなたからお聞きになられたのです」
「暁明(シャオミン)からだが?お前は最高だと言っていた」
「・・そう、ですか」

 木戸の言葉は割れたガラスのように鋭く尖って、時枝の心臓に突き刺さった。結局木戸にしてみれば変わった調味料の味見をしてみたいというだけの事だ。
 分かってはいても、やはり直接的な言葉は酷く残酷だ。
「あなたには、弘夢くんがいらっしゃるでしょう。それで満足出来ないのですか」
 こんな質問の答えなど聞きたくなかった。そして、言いたくもないのに言ってしまってから耳を塞ぎたい衝動に駆られて、代わりに自分の両腕を抱きしめる。

「満足出来ない。」

 予想外の答えに時枝は思わず木戸の顔を見る。
 満足出来ないという事はやはり弘夢が相手でも飽くという事なのだろうか。
 仄かな期待と嬉しさの欠片が時枝の中で儚くポツリポツリと浮かんだ。
 だが木戸は少し悲しそうだが、それでも嬉しそうな顔で話をし出した。

「あいつは、抱いても抱いても・・弘夢の心は俺に完全には向かない。あいつとすると、すごく苦しくて、
幸せで・・でも可愛くて仕方がない。抱けば抱く程足りなくて、他で少し抜かないとあいつから一時も離れられなくなりそうなんだ。すぐ壊したくなる。可愛いと余計に泣き顔が見たくなる」

人を愛する 木戸の切なくて優しい顔は本当に素敵で、その視線の先に見える妖艶で淫靡な青年にどす黒い感情が時枝の中に湧き立った。

 時枝は闇ルートで売買されていた人種も定かではない自分を沢村と同じように気紛れで木戸の親である社長に拾われた。何故自分がそんな所に居たのかも分からない。さらわれたのか、捨てられたのかさえも。そんな孤児を裏の世界で蠢く金持ちは都合のいい人間を育て上げるのによく買いに闇市に訪れる。
 絶対に逆らえない社長の言葉、完璧な木戸の右腕となる人間となる為に時間と金を費やした自分は決して木戸に対して私情を挟むな、という言葉が時枝を束縛させ、そして木戸への想いを歪ませていった。
 決して交合えないと言うのならば、木戸にとって必要不可欠の絶対的存在になろうと決めていた。そうする事で、木戸が抱く誰よりも特別な存在意義を見出していた。
 事実、木戸は誰にも本気になどならず好き放題遊び、相手を壊してきた。そして時枝の元へ戻って来た。どんなに抱こうが壊そうが、木戸が相手に執着することなど無かった。弘夢意外は。

 (殺したい・・憎い・・この人にこんな表情をさせるあの男・・)

 時枝もまた、ただ一人の木戸という男以外を愛せない男だった。



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★「それから」はすれ違った後に(全10話)の続編です。 

お待たせ致しました(-"-;A 時枝、木戸を愛していたのですね。
一方通行が多いな・・|柱|ヽ(-ω-;)反省
次回は沢村渡と淳平の動きです!


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それから41話

☆18禁です。

 次の日、木戸はまた仕事で出掛けた。一人きりで、遠くの町で今も日常を送っているだろうたった一人の愛おしい男を思って曇り空の町を眺めていた。
 すると、カチャリとカードキーを差し込まれて重厚なドアの開く音がして振り向くと、そこに時枝が不機嫌な顔をして入ってきた。
「あ、時枝さん・・何でしょう」
「木戸さまからエステの予約をしろとの事だったのですが、ちょっとした手違いでキャンセルになってしまって。代わりに私がやらせて頂きます」
「え・・何でわざわざ時枝さんが・・」
「その方じゃないとダメだというもので、木戸さまがならお前がやりなさい、と仰ったものですから」
 時枝は明らかに不機嫌な顔だったが、弘夢はそれもとても美しいと思った。そしてテキパキと準備をして弘夢をベッドに寝かせた。

「では失礼致します」
 そう言ってひらりとバスローブを肌蹴させられ、素っ裸にされると弘夢は恥ずかしくて目を伏せた。
 ゆっくりと人肌に暖められたハーブの香りのするローションを纏ったしなやかで薄い時枝の手がヌルヌルと弘夢の胸元から首もと、そして鳩尾の方へ移動すると、その妙に気持ちのいい感触にうっとりとしてきた。背中もマッサージするように動かされる力加減は絶妙で寝てしまいそうになる。最初はこの時枝にマッサージをしてもらうなんて、と緊張していたが、これだけ気持ちよくされると緊張どころかリラックスしてついウトウトしてしまった。
「上手・・なんですね・・時枝・・さん」
「それはどうも」

 そう言って本当に寝そうになっていた時だった。その気持ちよさそうな弘夢を見た時枝が感に触ったのか、突然手つきを変えた。今まで全身の筋肉を解す為にしていた動きが一変して、弘夢の眠っている性感帯を呼び起こすような動きに変わった。同じ所を触られているのに感覚が全く違う。弘夢はそうとも知らずに、自分のいやらしい身体がマッサージにさえも反応しているのだと思いこんでいた。
必死に出そうになる声と、反応しそうになる身体の動きを止めようとするが、わき腹や、臀部に手が回った時に我慢が出来なくなった。

「あっ・・ああんっ」
「おや、寝てらしたんじゃないんですか?」
「いや、その・・ごめんなさい・・何か、身体がおかしくて・・」
「困りますねぇ。それでは」
「あの、ごめんなさい!気にせず続けて下さい!時枝さんも木戸さんに命令されてしないといけないのに、すみません」
「分かりました」
 そういった時枝はほんの少し口角を上げた。

「ん・・ふ・・んあっ・・時枝さ・・何かさっきよりも・・ああんっ」
 上向きにされた弘夢の胸元を強く擦るように時枝は手を滑らせると、乳首が摩擦されて堅く尖った。それでも我慢するように目を瞑り枕を掴んで声を押し殺す弘夢を見て、時枝は更に股間の玉を揉み始めた。
「ちょっ、そこはダメですっ・・あっああっ」
「何を仰っているのです?ここも凝るのですよ?」
「いやっ・・きもちっ・・ああん」
「どっちの、気持ちいいですか」

 そう言った時枝の冷徹な顔が意地悪く微笑んだ感じがして、弘夢は恥ずかしさで顔を真っ赤にした。時枝のわざとの行為だとも知らずに必死に我慢しようとする弘夢に時枝は煽られた。
 前立腺を指摘するようなマッサージを繰り返しているうちに、硬く勃ち上がって真っ赤になった弘夢のペニスはピクピクと反応しながら大量にカウパー液を自分の腹の上に垂れ流していた。だが、時枝は決して弘夢の性器には触れることはなかった。それに耐えられなくなった弘夢がとうとう口にしてしまった。
「と、時枝さん!お願いです!触って下さい!ここもっ」

「困りましたねぇ。それはマッサージではありませんし。第一そんな事をしたら木戸さまにしかられてしまいます」
「おね・・がい・・もう、ダメっ」
 弘夢はあまりの我慢で涙が出てきた。
「泣かれましても・・ご自分でなさったら如何です?」
 弘夢は時枝のそのビロードのような感触の手が欲しかった。
「いやっ、時枝さんの、その手がいいんです!お願いっ」
「困ったお人だ。では少しお待ち下さい」

 そう言って時枝は携帯を取り出すと、今のやりとりを木戸に全て報告した。
「いいそうですよ。」
 それを聞いて弘夢がホッとして次いで身体が熱くなった。
「ですが、後でお仕置きだそうです」
「構いません!」
 その答えを聞いて時枝がゆっくりと瞬きをして更に冷たい顔で弘夢をひっくり返した。

 時枝の手が弘夢の性器を包んだ。
「あああんっ」
 そしてゆっくり後ろから扱いてやると、それに合わせて弘夢の腰も前後に動いた。
「気持ちいいっ・・時枝さんの手っ、すごい・・ああんっ」
 時枝はもう片方の指を弘夢のアナルに当てると弘夢から切ない声が漏れた。
「ふぁ・・」
「ここもマッサージして欲しいんですか?」
「は・・い」
「了解しました」

 前と後ろと同時にしなやかで細く長い時枝の指が刺激して弘夢はつい目を瞑って淳平をイメージさせていた。
「ああんっ・・いいっ、いいっ」

(淳平っ)

 そしてつい理性が無くなって後ろにいる時枝の形のいい唇を熱い目で見つめて、舌を伸ばしてキスをせがんでしまうと、その弘夢の唇に指を当てて時枝がゆっくりと弘夢の顔を離した。

「どなたかと間違われてますよ、弘夢くん」
 ハッと現実に戻って冷や汗をかいたが、再び襲ってきた快感で弘夢は直ぐにまた酔いしれた。
「イクっ・・ああん、イクっ」
「どうぞ」
「手の中で・・イってもいいですか・・ああっ」
「構いませんよ」
「あああんっ、イクぅう!イクぅうーッ」
 弘夢はビュルビュルと気持ちよさそうに時枝の手の中で勢いよく射精した。

「すみません、時枝さん」
 身支度を整えている時枝に向かって理性を取り戻した弘夢が呟いた。
「いえ。どうせお仕置きを受けるのは君でしょうし。」
「・・・」
「弘夢くん」
 初めて時枝から話しかけられて弘夢は驚いて顔を上げた。
「は、はい」
「君、まだ淳平くんの事、好きなの?」
 弘夢はドキリとした。ここで正直に答えるてしまえば、その情報はきっと木戸に筒抜けると考えて、あえて正直な気持ちは隠す事にした。
「いえ。もう終わった事ですから」

「そう。なら、木戸さまの事は?」
「え?」
 時枝はそんな事に興味を持つような人間ではなかった筈だった。何かの情報収集かとも思ったが、どこか悲しげな表情に心が動いた。
「いえ、その。まだ信じられなくて・・。俺、木戸さんに飼われてるし、ただの玩具に過ぎない気がして」
「木戸さまは、本気ですよ」
 時枝の声が鋭く突き刺さる。そして弘夢の横に座ると、弘夢の顔にそっと手を当ててきた。恐ろしく冷たく綺麗な顔に緊張する。

「私はね、弘夢くん。」
 時枝が艶っぽい表情で弘夢の耳元に唇を付けた。

「君の事、殺したい程憎いんだよ」
 弘夢は信じ難い言葉に身を凍り付かせた。時枝なら、簡単に出来る事だったからだ。ただ、木戸のものであるという事実が、それから守ってくれているようだった。
 だがそうまでして恨まれるくらいの関わりは持っていない筈だった。

「どう・・してですか・・」
 言葉が震える。今までそんな風に見て来られていたと思うと、悲しみと恐怖と混乱で冷や汗が出てきた。
「さて、どうしてでしょうね」
 そう言って弘夢の首に付けられた黒い首輪を後ろに少し引くと、弘夢の喉に首輪が食い込んで息苦しそうに顔を歪めた。時枝は眉一つ動かしていない。
「くる・・し・・時枝・・さ・・」
「君、痛いのは気持ちよくなれるのに苦しいのはダメなんですね」
 そう言って手を離した時枝はサッサと部屋を出ていった。
「ごほっ・・ごほっ」
 敵でも味方でも無かった男が、敵になった瞬間だった。



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今回ちと長くてすみませんでしたm(_ _;)m
時枝は弘夢が憎い・・。((((((ノ゚⊿゚)ノヌオォォォ
そして、お知らせです☆
明日から一週間ばかり「BL観潮桜夏のお題~心を焦がす恋~」をUPして行きます。
レギュラーはまた1週間後に再開致します!すみませんっ
前回の雨のお題の時みたいに長くはなりません^^;ご安心をw


★「それから」はすれ違った後に(全10話)の続編です。 

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それから40話

☆18禁です。少々ハードSMの描写ありですのでご注意下さい。

「うっ・・く・・あッ・・やッ」
 弘夢は信じられないでいた。
「ここら辺がいいんだろう?」
「やっめっ・・木戸さ・・ああッ・・も、無理ッ」
「どんどん入るねぇ。」

 ローションのたっぷりと塗られたその手は弘夢のアナルをゆっくりと通り、内部へ侵入していた。だが、前の時とは違い、ゆっくりと拡張をされていったそこは激しく切れる事はなく、寧ろどんどんと木戸の手を飲み込んでいったのだ。
「お仕置きじゃないから、いいだろう?そろそろ中で拳を作るよ?」
「い・・や・・怖いっ・・木戸さん、怖いです!」
 弘夢の怖がる顔を愛おし気に見つめた木戸がゆっくりと弘夢の内部で拳を作ると、内部で動くその不気味な動きに弘夢の性器が反応した。

「弘夢、気持ちが良くなった?硬くなってきてるぞ」
「いやぁあ・・」
 信じたくなかった。だが確実に体はこの異様な鈍痛と圧迫感、そして少しの出血を快楽として認識していたのだ。
「分かるか?弘夢の内蔵をこうして直に触っているんだぞ?生きたままの弘夢の内蔵は暖かくて気持ちがいいよ」
 普通なら身の毛のよだつ木戸の言葉に弘夢のペニスは更に反応した。きっと弘夢の意志とは関係なく身体がおかしな方向へ変化してしまったのだと思った。

 木戸が弘夢に拳を突っ込んだまま、電源コードの付いたカプセルのようなものを弘夢の性器に取り付けた。そしてそのスイッチを押すと、弘夢の腰がビクンッと激しく跳ねた。
「いやぁあああッ・・やッ・・なにっ・・あんっ」
「電気が流れてるんだよ。しかもカプセルの中は色んな動きをするから電気の刺激も色々でいいだろ」
 痛い刺激は直ぐに気持ちいいと感じるようになった。電気が勝手に性器を刺激する運動で、その動きに合わせて弘夢のペニスも勝手に動いた。

 木戸はゆっくりと弘夢から手を抜いてタオルで拭いた。四つん這いから倒れるようにベッドにうつ伏せになったままピクピクする性器もベッドに押しつけられる。
 ぐったりしている弘夢にお構い無しで、今度はコードの先端に付いているクリップを弘夢の乳首に挟んでスイッチを入れると、ビリッと胸に刺激が走った。
 そしてすかさず弘夢の首にカチャリと黒いオニキスで出来た首輪をはめられた。厚さ0.5ミリ縦幅約2センチ程のそれには、金色の鍵が通してあった。本物の金で出来た鍵はズッシリと重く、宝の鍵のような素敵なデザインの鍵はダイヤやサファイヤが埋め込まれていた。

「何ですか・・これ」
「首輪だよ」
 弘夢は木戸のプレイの趣味かと納得した。だが、次の瞬間、木戸はニタっと笑って自分のペニスをズンッと弘夢に挿し込んだ。
「あんっ」
「知ってるか弘夢?オニキスはギリシャ語で“神の爪”って意味だ。そしてオニキスは美の女神、アフロディーテの爪が変じたものなんだと。綺麗なお前にぴったりだろう?魔除けの意味もあるしな。」
 魔除けと聞いて弘夢はこの首輪にそんな効力はないと悟った。何故なら魔王がいるとすればきっと木戸に違いないと思ったからだ。
「ああんっ・・あっ・・やっ」

「そしてこの首輪なぁ、後ろの暗証番号入れないと外れないようなシステムが付いてんだ。」
「え・・ああっ・・あんっ」
「で、この鍵は・・そのうち分かるさ」
「あああっ・・」
 木戸がスイッチを強にすると、敏感な部分に激しい刺激が送られ、同時に後孔も木戸にメチャメチャに突かれて弘夢はベッドの上で陸の上に上げられた魚のように飛び跳ねた。

 行為を終えて広すぎる部屋でバスローブに身をつつんだ弘夢が夜景を一望出来る窓辺に立っていると、木戸がシャンパンを持ってきてくれた。
「どうも」
「その首輪、俺じゃなきゃ外れないから。」
「そう・・ですか」
 弘夢は別に問題視していなかった。どうしてもこれを外したいという状況を思いつかなかったからだ。
 このホテルは木戸の家の一つであったが、きちんと毎日普通のホテルのように清掃が入り、シャンプーリンスなども新しいものと取り替えられた。そしてそれら全ての日常の品物がブランド品のものという、高価な類で揃えられていた。

「今度は俺の別荘にでも行こう。それとも海外にある家に行ってみたいか?」
「木戸さん、お仕事は大丈夫なんですか?」
「仕事?ああ。昔から時枝に大半任せてあるから大丈夫だ。いざとなればその時は俺だって動くしな」
「そう、ですか」
 とは言っても木戸もたまにしか弘夢の所へ訪れる事が出来なかった。だから、一緒にいる時は木戸の好きなように抱かれるというのが常だった。
 木戸のいない時は、弘夢は大抵一人きりだった。外界から閉ざされ、その間は誰かしら見張り役がいたが、年齢は様々で少年だったり、青年だったり、中年だったりした。



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久々フィストw木戸のお気に入りプレイw
そして木戸の正体、魔王疑惑が浮上ww


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それから39話

 柔らかな朝日がカーテンの隙間から入って部屋を薄く明るくさせた。その明るさが自然と淳平を目覚めさせた。
 淳平はボーっとする頭と気だるい下半身で今一つ状況を把握出来ないでいた。
 ふと気付くと横向きに寝る自分の胸の中にふわふわしたものが蹲っているのに気付いた。

(さわ・・むら?)

 そしてだんだんと、昨夜の自分の夢だと思っていた事が、沢村の裸体と自分自身の裸体、そして沢村の後ろ首に無数に付けられたキスマークで、あれが弘夢相手ではなく沢村との情事だったと認識した。
 淳平は、サーッと血の気が失せるのを感じた。そっと自分の身体を沢村から話すと、涙の痕が線となって付いていた。

(俺は・・何て事を・・)

 自分を好きだと言ってくれた相手へのこの仕打ちは、素面になった淳平には耐え難く重くのしかかってきた。
「ん・・んん・・」
 その時沢村が、頬で感じていた温かな淳平の温度が居なくなって起きてきた。
「沢村・・」
「ん・・先輩・・おはようございます」
「あ・・うん・・あの・・昨夜・・なんだけど」
 沢村は一点をボーっと見つめたまま、淳平とは目を合わせなかった。

「本当にすまなかった。俺、どうかしてて・・」
「嬉しかったから」
「え・・・・」
「嬉しかったから・・大丈夫ですよ」
 沢村はそっと微笑んで淳平にすり寄った。
 淳平は混乱していた。きっと自分は無理やり沢村を弘夢として強要して犯したに違いない。それなのに嬉しいと言ってすり寄るこの男が理解出来なかった。

「なら、何で泣いてた・・痛かったんだろ?怖かったんだろ?!どうしてッ・・」
「でも!!・・嬉しかったんだ・・先輩が好きだから」
 淳平は心臓を掴まれたように感じた。好きだという純粋なその部分は、誰よりも理解できた。
「ごめん。・・ごめん、沢村・・。ごめんな・・」
「先輩、泣きそうな顔してる・・」
「ごめん・・」

「なら、お詫びに、優しく強く抱きしめてくれませんか。俺だけを見て」
 沢村が震える唇でそう泣き笑いして言った。
「ああ」
 淳平は沢村の一回り小さな身体を引き寄せると、ギュッと強く胸に抱いた。
 その優しくて強い力を感じた途端、沢村は止めどなく涙が溢れて嗚咽が漏れた。
「うっ・・ううっ・・く・・うっ・・」
 淳平はゆっくりと沢村の震える背中をさすってやる。

「せ・・ぱい・・うっ・・く」
「ん?」
「なま・・えっ、呼んでくだ・・さいっ・・」
「沢村・・」
「ちが・・っ・・下の・・名前・・」
 そう言われてそういえば沢村の下の名を知らない事に気付いた。
「悪い・・下の名前、何て言うんだ」
 そう言った途端、沢村が先ほどよりも勢いよく泣き出した。

「あ・・ああ、悪い・・悪かったって。俺そういうの疎くて・・な?教えてくれよ?ちゃんと呼ぶから」
  沢村が少し泣きやんだ。
「ワタル・・」
 名前を聞いて淳平が止まった。そしてぷッと急に吹き出した。
「何が可笑しいんですか」
 目を赤くした沢村が頬を膨らませて眉をひそめて淳平を見上げた。
「ははっ・・いやな、タンポポの綿毛みたいなお前が、ワタと付く名前だったとはと思って」
 そう言えば、自分の名を木戸に貰う時に、「植物でお前に似てるのがあるから」と言っていた。それは、やはり綿毛の事だったのだろうか。

「ワタル・・」
 優しい声で呼ばれた沢村が顔を上げると、やっぱり優しい目で見る淳平の顔があった。
「どういう字でワタルなんだ?」
「え・・えと、川を渡るの渡です。海を渡って来たから・・」
「え?」
 最後の由来はほんの小さな声で呟いて淳平には聞こえなかったようだ。
 そして淳平が再び筋肉のついたその逞しい腕で沢村を強く抱きしめた。

「渡」

 淳平がそっと沢村の髪に唇を落とした。沢村はそれだけで幸せで溶けそうだった。


 そしてその頃、VIP専用の高級ホテルの最上階が木戸の住処の一つという場所で、弘夢は木戸の狂乱にも似た愛を一身に受けていた。




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なんだぉーこの雰囲気(>□<)!!
そして弘夢ョ・・何されてるんだ!?


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それから38話

 沢村は時枝との電話を切ると、深いため息をついた。
 淳平に近づいたのは時枝から指示されたからだった。
 裏の世界の人身売買でたまたま上海で拾われた幼い沢村は、木戸の気まぐれで買われたのだった。
 まだ言葉もきちんと話せないうちに日本に連れて来られ、新しい名前を貰って木戸の手を出している裏組織に仕える身となった。

 スパイ活動はこれが初めてではなかった。この人の良さそうな沢村の外見と可愛らしさで標的の元へ潜入し、誑かし、情報を得たり騙したりと色々な仕事をこなしてきた。
 木戸の言う事は絶対だったが、専ら指示を出したり連絡を取るのは時枝が中心となってやっていた。
 
 今回の仕事も、木戸にとって邪魔になり得る人物を観察、抑制する役として回された。
 だが、淳平は悉く沢村の誘惑や魅力どころか、存在すら見ていない状態だった。
 時枝は何とか身体を使ってでも淳平を虜にしろと言ってきたが、その難しさは沢村自身が一番良くわかっていた。

 仕事だから、そう思って今までやってきたのに、何故か淳平という男に余計な感情が入っていった。弘夢の情報は時枝から聞き出して把握していた。 そして今の弘夢の情報も持っていた。

 最初はこんなバカは男はさっさと死ねばいいんだと、思っていたのに、死ぬほど一人だけを思ってきた男の絶望の表情を見て、沢村は墜ちた。

 地の底に叩きつけられた男の顔は、シャレコウベのようで、何も無くて、とても美しいと思った。
 そして本能だけで残った息をそっとするその汚らしく厭らしい男の姿を見た沢村は全身が粟立った。
 そして、これほど思われる弘夢という男にも興味が沸いたが、人が人にここまで執着出来るものなのかと、衝撃さえ覚えた。
 人を執着することも、される事もよく分からずに生きてきた沢村にとってそれはとても眩しくいつの間にか羨む世界となっていた。
 気がつくと淳平が弘夢を少しでも忘れて自分と話している事に心躍るような感覚に襲われるようになっていた。
 淳平が少しでも笑うと嬉しくなって、悲しい目をすると胸が痛くなった。
 沢村は初めて人に執着した。

 私情を挟まない、否、挟めない人間だからこそスパイとして選ばれてきたのだが、こんな事は初めてだった。
  
 沢村は淳平がおかしな行動を取ったら直ぐに連絡を入れる事になっていた。だから淳平が弘夢のマンションへ行くと言った時もその様子を報告する為にもついて行ったのだ。
 だが、本心は、自分も一時も淳平の弘夢へ向けられた行動に目を離したくなかった。
 淳平がマンションへ駆け上がった後、沢村は時枝に電話をして状況を説明した。すると、時枝から「告白でもして意識をお前に向けさせろ」という命令が下った。
 仕事だけならば、簡単に告白の一つや二つ笑顔で出来た。だが、どうしても私情が絡んでしまった。
だからきっかけは命令だが告白した思いは自分自身のものだった。

 そして次の命令は「身体でつなぎ止めろ」だった。

 本当はして欲しくなかった。でも本当は自分を抱いて欲しかった。
 淳平に抱かれた沢村はとても悲しくて、とても嬉しかった。

 電話を鞄にしまって再び部屋に戻ると、愛しい男の寝顔を見て、沢村は隣にそっと座って声を殺して泣いた。



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それから37話

☆18禁です。一部痛い描写があります。閲覧にご注意下さい。


 グリグリと乱暴に押し広げるように沢村のアナルに指を突っ込んでは掻き回す。
 その痛みに沢村が高い声で叫んだ。
「痛・・いッ・・やめッ・・ああッ・・いやァァ」
 それでも容赦なく解すその手は止まらず、沢村はひたすら枕を掴んでは腰を動かして痛みを逃がそうともがいた。
 どうしたらいいかも分からず色んな痛みから逃れるために、沢村は呪文を唱えた。

「うっく・・い・・たいよ・・淳平・・」
 その言葉にハッとした表情で止まった淳平は、指をそっと引き抜くとうつ伏せで耐える沢村の上へ被さってきた。

「ごめん、痛くして。ごめんな」
 優しいその声と共に淳平の唇は柔らかな沢村の髪や頬、肩に降り注がれた。
 そして、再び淳平の指が沢村のアナルへ触れると、先ほどの痛みを予測した身体は反射的に逃げるが、先程とは打って変わって別の感覚が襲ってきた。
 ゆるゆると蠢く淳平の指は中をやんわりと刺激して、だんだんと指の数も増やされていった。

 沢村は、今から淳平が何をしようとしているかを理解していた。
 恐怖と緊張で淳平の顔を見ようと後ろを振り返ると、すぐそこに淳平の顔があった。
「淳・・んっ・・んふっ・・んんっ」

 名前を呼びきる暇も与えず唇を塞がれ、後孔に熱い塊を押しつけられた。
「んーッ・・んっんっ・・んんー!」
 沢村の声は全て淳平が口移しで吸い取っていく。
 メリメリと侵入しくるその大きな生の肉棒は、目で見るよりアナルで感じる方が数倍大きく感じる。
 ゾクゾクと粟立つ身体は興奮と緊張で、目の前にある枕を手繰り寄せ、淳平にいいように舌を蹂躙される事しか出来ないでいた。
 ズンッと亀頭部分が入り口を抜けて沢村の体内へ侵入し、続けて残りの肉棒もみっちりと埋まった。

「あ・・あ・・っ」
 暫く慣れるまで後ろから淳平が沢村のペニスを扱いていると、だんだんと硬さが再び増してきた。
 内側でジッと圧迫されるある一部分から、妙な感覚が沢村の下半身に広がってくる。
 淳平が少しずつ腰を動かしてくると、大きなペニスが沢村のあらゆる箇所を擦り、そのおかしな感覚を起こす一点を軽快に突いてきた。

「あんっあんっ・・あっ・・やっ・・ああんっ」
 沢村は何故こんな声が出るのかも分からずに、ただ抑えの効かなくなった身体の反応を声で発散させているようだった。
 ガッシリと腰を掴まれ、更に高く尻を突きだす様にグイッと持ち上げられ、淳平が容赦なくその一点を自分のペニスで突いてきた。
 パチンッパチンッと沢村のむっちりした臀部に淳平の引き締まった腰が打ちつけられる。
 その反動がベッドに伝わって枕が跳ね、シーツはどんどん乱れてズレてくる。

「やっ・・やっ・・ああんっ」
 淳平は後ろから同時に沢村のペニスを扱き上げると、いつもよりも身体全体がその気持ち良さで蕩けてしまいそうになった。
「ああんっ、イっちゃう!イ・・クよぉ・・あああっ」

「愛してるよ」
 淳平がそっと耳元で囁いた。

 弘夢に向けられた言葉。そんなものは分かっているのに、その言葉に反応した沢村の身体は正直だった。

「ひっ・・やぁあああ・・んっ」
 その瞬間にビュルッと沢村のペニスから精液が勢いよく飛び出して、ガクガクと崩れ落ちるが、その身体掴んで淳平も更にピストンを速めて射精感を高めた。
「んっ・・んっ・・はぁ・・気持ちいよ・・はぁ・・ああっ・・イクッ」
 淳平は倒れている沢村に強く腰を打ちつけて体内の奥深くへと射精した。



 疲れ果てた淳平は沢村に渡されたタオルで適当に拭くと、そのまま深い眠りについてしまった。
 
 時刻は既に夜中1時を回っていた。
 沢村は、ベッドの下に落ちてしまった寝巻の上着を自分の肩に掛けると、ゆっくりとベッドから降りてリビングへと向かった。
 暗がりで椅子の上に置いてあった自分の仕事の鞄の中を探ると、中から携帯を取り出した。
 ロックを解除する番号を押して、リダイヤルボタンを押す。


RRRRRR・・・


 プツッと相手が着信を取る音がした。


「あ、お疲れ様です。沢村です。はい。・・はい。今、終わったところです。・・はい。わかりました。
では、失礼します。時枝さん」



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Σ(゚ロ゚;)

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それから36話

☆18禁です

 カーテンの隙間から微かに漏れる外の街頭の光で、淳平の顔は暗がりに薄く浮かんでいた。
 その瞳は沢村を見ていたが、確実に見ていなかった。
 それはいつも沢村を見る目つきではなかった。
 見た事もないその優しく、切なくて狂おしいまでに相手を求める様な淳平の顔は、今までで一番魅力的だった。
 自分を全く別の存在として見ているのを認識していても尚、沢村は突如掴まれた臀部の刺激と淳平のその目線に、高鳴る胸の鼓動を誤魔化せずにいた。

「先輩っ・・おれ・・あのっ」
 淳平の顔が近づく。
 追憶という名の太陽の光を受けた弘夢の影をずっと見ていたせいで、何も無い空間に浮かぶその残像現象は、淳平にとって紛れもなく弘夢そのものだった。

「弘夢・・」
 淳平のあまりに優しい声が沢村の脳へ直接染み込んでくる。
「違いますっ・・俺はさわむ・・っ・・んっ・・ふ」
 沢村が言い終わらないうちに淳平が沢村の唇を吸いつく様に塞いだ。
 その蕩けるようなキスに沢村は全身の力が抜けてくる。
 相手は自分を弘夢だと思い込んでしているその優しくて激しいキスの嵐が、あまりに気持ち良くて言いたい事も言い出せなくなる。

 淳平は沢村の臀部から手を出すと、沢村の手首を掴んでベッドにグルッと仰向けに押し倒し、覆いかぶさるようにして乗ってきた。
 その勢いでベッドは跳ねてギシギシと軋んだ。
「せんぱっ・・んんっ・・ん」
 淳平は、無我夢中で沢村の唇や舌を貪り、大きめのパジャマのボタンを手際よく外して上半身を露わにさせた。
 沢村も本当はこうなる事を望んでいた筈だが、望んでいたのは“自分と”こうなるという事だった。
 淳平が今触れているのは、弘夢だった。

「や・・ソコはっ・・」
 淳平は沢村の色素の薄い乳首に吸いついた。
 淳平の舌はその突起を突く様に動き、その尖りは直ぐに硬くツンと立ち上がった。
 それと同時に手際よく淳平は沢村の下の寝巻も下着ごと取っ払ってしまった。
 ビュンッと勢いよく飛び出した沢村のペニスはピタンッと自分の腹にまで反り返って打ちつけた。

「すげぇ勃ってる」
 そう言ってニヤついた淳平の顔はとても色っぽく、沢村はゾクゾクした。
 このまま、この人に抱かれたい。この男にメチャクチャにされたい。そんな衝動が沢村に湧きおこってくる。
「先輩・・」

「淳平、だろ?」

 その言葉は荒々しく削り出された尖った鉄の棒のようで、沢村の心を深く突き刺した。
 それでも、触れられたいと思ってしまった沢村は小さく言った。

「ジュン・・ペイ」

 その瞬間に淳平は沢村の股間に顔を埋めた。
「あっ・・いやっ・・」
 抵抗する間もなく淳平は沢村の皮の被ったペニスを掴むと、その皮を一気に下へ剥いて中身を出した。
 沢村は裸にされるより恥ずかしい気がした。

「やめっ・・あああんっ」
 淳平は愛おしむようにジュプジュプと音を立ててそれを味わっているようだった。
 その快感は上り詰める一方で、沢村は堪らず淳平の漆黒のストレートの髪を緩く掴んで顔を上げた。
 淳平が自分のモノを加えている姿は、沢村の理性と困惑を断絶するものだった。

 しかし、その時沢村が目にしたものは、暗がりに漏れる光を反射する雫だった。

「せん・・ぱ・・い」
 淳平は下を向きながら沢村のものを一心不乱にしゃぶっていた。
 だが、頬から流れ、顎からポタリ、ポタリと落ちる雫は彼の涙だった。

 弘夢だと思って嬉しい涙なのか、それとも心では別人を抱いていると分かって悲しいのか、それとも沢村に対する罪悪感だというのか。
 言いたい事は山ほどあるのに、淳平の口は止まらずに加速していき、一気に沢村の射精を促した。
「だ・・めっ、イっちゃいますっ・・ああんっ、出ちゃ・・うぅううっ」
 ビュクビュクと勢いよく沢村の精液は淳平の口内で爆ぜた。

「ふぅ・・ん・・ふ・・」
 紅潮した顔の沢村は真っ直ぐに淳平を見ると、その目を見ずに淳平はクルリと沢村をひっくり返し、腰を強制的に持ち上げてアナルに唾液と精液の混じった液体を流し込んだ。
「あっ・・イヤっ・・も・・先輩っ!」

「“淳平”だろ?!」

 沢村がその淳平の荒げた声にビクッとなる。

「も・・やだぁ・・」
 沢村の瞳にじわりと温かな涙が湧き出るのと、淳平が沢村のアナルに指を突き挿すのは同時だった。



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それから35話

「先輩、僕、先輩が好きです」

 優しくてふわふわしていて、暖かい日だまりのような青年は意志の強そうな瞳が真っ直ぐ淳平を見つめる。
「はっ・・お前何言っ・・」
 ふわりと沢村が淳平の頭を抱えるように抱きしめた。
「大丈夫。僕と居れば、きっと楽になれますから」
 淳平はその心地よい魔法の言葉のような、麻薬のような妖しい響きの言葉にグラリと上半身が傾いて、一回り小さな沢村の肩に身を委ねた。



 帰りの車は沢村が淳平の代わりに運転をした。
 沢村が淳平を好きだと言って来たが、その事について何かを考えたり、どうこうしたりという事は出来る状態ではなかった。
 ただ、その事実を知る事しかできないと言うと、「沢村はそれでもいい」と少し寂しそうだが、満足そうに微笑んだ。

 発作の起きた淳平の身体に、沢村の言葉が鎮静剤のような効果を発揮したようだった。
 あのまま一人であの場所に居たらどうなっていただろうか。

 その日から沢村は以前にも増して甲斐甲斐しく淳平の世話をするようになった。
 淳平がいつものようにソファに寝転がり、タバコをふかしてボーっとしていると、風呂上がりの沢村が近づいてきた。
「先輩、いつもソファじゃ身体痛いでしょう」
「ん、いや別に。」
 淳平はいつも寝る時はリビングにあるソファで寝ていた。寝室にあるセミダブルベッドは沢村が一人で寝ている。
「先輩、たまにはベッド使って下さい。俺、今日こっちで寝ますから」
 沢村が手が隠れる位の少し大きめで薄いグレーの寝巻を揺らしながら淳平の腕を引っ張る。
「いや、俺は本当にいいから、お前あっちで寝ろ」
「そんな事言わずに!」
 沢村が力を入れて淳平の腕を引っ張って立たせようとするが、体格のいい淳平は全く動かない。
 沢村が意地になって力を込めると、下の絨毯が滑って沢村の体制が崩れた。
「あっ!!」
「あぶねッ」
 ガッシリとした腕に支えられ、淳平の厚い胸板が白いTシャツ越しから感じられて、沢村の顔が赤くなる。
「あ・・すみません」
「ったく何やってんだよ、お前。もういいから寝ろよ」
 ぶっきらぼうに呆れた目を向けられても、その淳平の男前の顔立ちがいっそう魅力的に映るだけだった。

「じゃあ・・せめて、今夜は一緒に寝て貰えませんか」
「あ?」
「だ・・めですか」
 淳平は何となく抵抗感があったが、それが何に対してなのかも理解する力もなかった。
「イヤ・・ですか」
「嫌じゃねぇよ。」
 沢村はタンポポが太陽の光を受けて花開いたような笑顔を向けた。
 その笑顔を見ると、淳平はほんの少し、嬉しい気持ちになった。

 初めて沢村と一緒に寝るセミダブルは意外と広く感じた。今までソファで寝ていたからそう感じたのだろうか。
 人と隣り合わせで寝るのは久し振りな気がする。

 淳平が沢村の方を向いてウトウトとしていると、胸元に沢村が寄り添ってきた。
「なんだ」
「好きだから、こうしたくて・・ダメ?」
 そう言って暗がりで見える沢村の上目遣いが妙に色っぽく見えた。
「別に、いいけど」
 沢村は嬉しそうにピトッとくっついてきた。
 だんだんと沢村の手が淳平の背中に回り、首もとの唇を寄せてきた。
「・・・」
 何も考えたくなく、淳平は黙ってその気持ちいい感触を味わっていた。
「はぁ・・先輩、すごい良い身体してます。」
 そう言えば弘夢も淳平の身体が好きだと言っていた事を思い出す。
 淳平は首筋や頬に感じる柔らかな唇の感触で、暗闇の中に弘夢の残像を浮かべていた。
 淳平は沢村の薄い寝巻のズボンの中に両手を突っ込むと、下着の中まで手を入れ込んで沢村の尻を掴んだ。
「あっ・・ん!せんぱ・・い?・・」



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それから34話

 車の中では終始無言だった。
 普段では気にならない信号の待ち時間も、淳平はイラつきでついタバコに火を点ける。
「コホンッ・・」
 淳平の吐き出す紫煙に咽る沢村の咳で、ふと車内に自分以外の人間がいるのだと気付く。
「悪い」
 そう言って淳平は窓を少し開けた。
「いえ、ありが・・」
 消え入りそうな沢村の声は、青信号と共に噴出されたエンジンの音に掻き消された。

 弘夢のマンションの前にハザードランプを点けたままで駐車して、淳平は沢村に何も言わず飛び出して行った。
 その走り去るグレーのスーツ姿の淳平を沢村は窓越しに目で追う。
 淳平が視界から消えると、沢村は軽く溜息をついてポケットから携帯を取り出した。



―弘夢!弘夢!弘夢・・!

 祈るような気持ちで弘夢の部屋のドアの前まで来て、躊躇する事無くドアを叩いた。
「弘夢!いるか!?俺だ!淳平だ!おいっ」
 ドンドンドンドンッ
 中からは人の気配がしない。しつこくドアを叩いても周りの住人すら出てくる気配がしない。
「・・っれか・・誰か出てこいよ!!弘夢と一緒にいた奴でもいいから!出て来いよ!!」

―どうすればいい・・

 淳平は隣の部屋のインターホンを押した。
 しかし暫く押しても誰も出ない。
 次々に他の住人の部屋のインターホンを誰かしらが出てくるまで押して行った。
 一番端の部屋に辿り着いた時、ついに中から女性が出てきた。
 親友に頼まれて部屋に忘れ物を取りに来たから、管理人の連絡先を教えて欲しいと願い出ると、女性は承諾してくれた。
 そして自分から鍵を取りに行った淳平が開けたその弘夢の居た部屋には、人の住んでいた痕跡すら残されてはいなかった。

 そこに弘夢がこの間までいた。そんな夢のような事を思って、少しでも同じ空気が吸えるかもと深呼吸をすると、途端にあの酷く冷たい目をした大きな男の姿が脳裏に浮かんで吐き気が襲ってきた。
 この部屋には確かに弘夢も居たが、同時にあの男もいたのだと。
 何も腹に入っていない淳平は胃液ばかりが込み上げてきた。

 もう二度と会えないのだろうか。何も告げずに消える程自分は弘夢にとって微塵の存在でしかなかった。
 それが悲しくて胸が引き攣る様に痛んだ。

 あの時、心から愛し合ったのは幻だったとでも言うのか。
 身体でも愛し合ったが、何より心で愛し合ったのはいくら嘘と言われても真実だったと分かる。
 分かってしまうから、望みを捨て切れず、その後の言動もどこかで信じていなかった。
 だが、会えない状態に持ち込まれるとは思いもしなかった。

―弘夢。俺の事、もう愛してないのか。もう、顔を見る必要も無くなったのか。

「先輩」
 聞きなれたその声に顔を向けると、玄関先に沢村が立っていた。

―弘夢。俺は、写真だけじゃやっぱり足りなくて・・

「・・う・・っ・・はぁ・・」
 声を出そうとしても吐き気が止まらない。

―“もしもし”って声だけでも聞こうとしたんだ。

「先輩・・」

「うっ・・む・・が・・いな・・っ」

―弘夢が、居なくなっちゃったんだ

「うん・・」
 沢村に言いたい事が通じているのかは分からないが、頷いてくれた。

「ど・・っ・・て」

―どうして

 その時背中にふわりと温かい重みが淳平を包んだ。
「きっと、夢だったんです」
 
―ユ・・メ?

「最初から居なかったんです」

―そんな筈はない

「そう、思って生きていく事は出来ませんか。先輩」


 沢村がゆっくりと崩れ落ちて膝まづく淳平の正面に座ると、温かく小さな掌で淳平の冷たく青い頬を包んだ。
 不思議とその柔らかな感触と、何故だかとても悲しげな沢村の表情でいつの間にか吐き気は治まっていた。

「先輩、俺、先輩の事が好きです」



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それから33話

 淳平はジットリと濡れる掌の中に受話器を持っていた。
 ドクドクと心臓を通過する濁流のような血液が手の先までその震動を伝えて震える。

―会社関係の人の振りをして、声を聞くだけ。ただ、それだけだ。
 
 禁断症状のように弘夢に縋る淳平は弘夢の何かをずっと求めていた。
 ただ声を聞くだけならば、そう思って会社から人気が無くなるのを待って受話器を取ったのだ。
 まだ完全に弘夢を断ち切る事など不可能だった。

 “もしもし”。その一言を、その肉声を聞くだけで暫くは生きていける。そんな気持ちが後押しさせた。
 電話番号を押して、取次の事務の女性に弘夢に繋ぐように話すと、語尾が小刻みに震えた。
 だが、次に返ってきた応えは、心臓の濁流が一気に凪の沼地に変貌するものだった。

「え・・すみませ・・ん、もう一度・・」

「えっと、桜井は1週間前に退職されました。」

 女性の言葉に鼓膜が切り裂かれていく。

「どう・・してですか・・」
 淳平は自分が今何を質問しているのかも良く分かっていない。
「詳しい事情などは分かり兼ねます。」

 電話を切ると、すぐさま事務所を飛び出し駐車場へと走った。
 駐車場へ直結しているエレベーターのボタンを連打していると、ポンと落ち着いた機械音と共に扉が開いた。
 エレベータ―の扉が開こうとする前から両手でこじ開けるようにして無理やり開かせると、中からふわりとした
驚いた顔した一回り小さな同僚が出てきた。

「先輩っ!どうしたんです、慌てて・・」
 沢村が一瞬嬉しそうな顔をしたが、淳平の徒ならぬ緊迫した雰囲気に反応した。

「あ・・いや、ちょっと急ぎの用で・・悪い。先に帰っててくれ」
 淳平が扉を閉めようとボタンを押すが、沢村は出て行こうとしない。

「どうした?早く出ろよ」
「嫌です」
「あ?何言ってんだよ、今急いでるんだ、早くしろよ!」

「弘夢さんに、何かあったんでしょう」
 淳平は一瞬止まったが、そうこうしている時間すら惜しい気持ちでイラついてきた。

「ああ、そうだよ!あいつの会社に電話したら、あいつ会社を辞めたって!だから・・」
「だから確かめに行くんですか?」
「そうだよ!悪いかよ!?」
 荒げた淳平の声はエレベーターに反響する。
 沢村は悲しそうな顔して俯き、グッと唇を噛んだ。

「別に・・」
「なら、早く降りろよ!?」
「嫌です。僕も一緒に行きます・・」
「ああ!?」
 手を離している隙に再びポンと機械音が鳴って扉が閉まり、そのまま駐車場まで降下し始めた。
 淳平はチッと舌打ちしたが、沢村を連れて行くだけなら別に害は何も無いと思い、取り敢えずは承諾した。
 それ以外に時間をロスしない手を思い浮かばなかった。

「勝手にしろよ」
「・・・」

 沢村はうっすらと溜まった涙を見せないように俯いたままコクリと頷いた。



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それから32話

 弘夢はベッドの中で横向きに、後ろから木戸に抱かれて眠っていた。
 目が覚めると、走馬灯のように木戸との情事が脳内を駆け巡り、同時に淳平の悲しみと絶望に満ちた苦悶の表情が浮かび上がってきた。
 弘夢は大きくガッシリとした自分の胸元に巻きつく木戸の腕にそっと手をやると、グッと抱き寄せられてビクッと反応してしまった。

「弘夢・・眠れないのか?」
「あ・・いえ、何となく目が覚めてしまって・・」
「優しく抱いたから逆に眠れなかったのか?」
 木戸が意地悪く低い声で内緒話でもするようにそっと弘夢の耳元で言った。
 弘夢はその熱い息が鼓膜に掛ると反射的に背中をビクつかせる。

「感じるの?これ・・」
 木戸が何度も息を弘夢の鼓膜に直接入れ込む。
 弘夢は否が応でも二の腕から胸元にかけて鳥肌を立ててしまう。
「や・・木戸さん」
 弘夢が掠れた声で抵抗しながら枕をギュッと掴む。

「弘夢、お前ここ引き払え。俺の所に来い」
「え・・・」
「俺が全部手続きしてやるよ」
 木戸が弘夢の首筋に舌を這わせる。
「でも・・」
「心配するな。それに、働く必要もない。」
「えっ!?」

 会社を辞めろ、という意味だった。
 驚きと焦りと更なる不安が弘夢の胸を過る。
「あそこにいるとまたいつアイツが来るかも知れないからな。それにお前はいつも俺の横に居ればいい」
 それを承諾すれば、完全に淳平との縁が切れそうな気がした。

 だが落ち着いて考えて、もう既に縁は断ち切れているのだと気づくと自分を胸の中で嘲笑した。
 他の誰でもない、自分自身が断ち切ったというのに無意識に溢れてくる未練にやるせない。
 そして、考えるまでもなく木戸の提案は命令だという事と、それに抗う術を持っていない事にも遅れて気づく。

 会社を辞め、淳平を忘れ、木戸の所有物として一生暮らす。
 覚悟を決めるという次元ではなかった。
 それでも生きていく意味を見つけるのに少し困るという気持ちが大きいだけだ。
 淳平を守りたい、唯それだけで生きていく。
 自分を励ますのに淳平との思い出を繰り返し繰り返し、記憶のフィルムが擦り切れるまでリピートをしていく。
 そうして生きていこうと決めたのだ。

 だが、木戸に愛していると言われ、自分を好きになれと言われ、弘夢にはまだ戸惑いしか生まれて来なかった。
 木戸を好きになると、幸せになれるのだろうか。
 幸せを望んでもいいのだろうか。
 淳平さえ幸せになればそれでいいと思っていたが自分はこれからどうすればいいのか、未だ麻痺する頭は上手く回らず木戸の深い囲いの中で大人しくする以外に何も出来なかった。

 それから直ぐに、弘夢は退職し、マンションを引き払い、姿を消した。



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今回、ぽぽたん(タンポポ沢村)の出番はなし!

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それから31話

☆18禁です

 せり上がってきたオルガズム感はあっという間に頂点まで達し、ビクンビクンと身体全体を跳ねさせるようにアイレンは痙攣が起きる。
 その痙攣と同調するように後孔は激しく内部から入り口にかけて伸縮して時枝のペニスを締め付けると、その激しい刺激に時枝はそれを待っていたとばかりに、アイレンの腰を掴んでいた両手を離して、ソファの背もたれを上半身を伸ばして掴む。
 そしてソファごと一層激しく腰を叩きつけて射精感を身勝手に高めていった。
「はっ・・はっ・・」
 静に息を荒げる時枝の微かに聞こえる声が艶めかしい。
 アイレンがその感じているだろう時枝の顔を見ようと顔を後ろに向けようとすると、時枝はガッとアイレンの髪を掴んで前に向けさせた。
「・・見るな・・んっ」

 既に中でイき続けているアイレンはヒクヒクと身体を痙攣させながらソファの背もたれにしがみ付いている。
 アイレンから流れ出る唾液はそのままソファに垂れていく。
 一段と時枝のペニスが硬さを増して、アイレンの一番弱いところを突いてくると、更に敏感になっているアイレンは甲高い声を上げて、時枝は小さく「ふっ・・んっ」と呻くとアイレンの中に射精した。

「そろそろ身なりを整えたらどうです?後ろから流れ出てますよ」
 時枝が冷たくソファにイったままの姿勢で放心状態になっているアイレンに言い放った。
「で、本当の商談室はどちらです?」
 時枝がカチリと神経質そうな眼鏡を中指で上げる。
「2階の旦那様のお部屋です・・」
「分かりました。では」
 時枝は踵を返してドアへ向かった。暁明(シャオミン)が来るまであと10分だ。

「時枝さん・・」
「何です」
 顔をほんの少し横に向けてアイレンのだらしのない格好を視界の端に入れる。
「気持ち良かった。今度はさせて下さいね、あとシャオミンさまには内緒ですよ」
「いつも内緒にしているでしょう?それと、させませんから」
 そう冷たく言い放って部屋を出た。

 気だるい身体をそんなそぶりを一つも見せずにリズムよく歩いて行く。
 目的地のドアをノックすると、中から木戸と同じ位背の高い不思議な雰囲気の妖艶な男が出てきた。
 中国服の品のいい、美しい正装を身を包み、首より少し長めの黒い髪が似合っていた。
 男らしい色っぽさが気品と混ざり合って、普通ではなかなか容易には近づけない雰囲気を醸し出している。
 そして、何とも言えない色男だ。体格も木戸とそう変わりはないほど良い。

「待っていたよ。時枝くん、さぁ入って」
「失礼します、シャオミンさま」
 そこは、シャオミンの寝室だった。
 時枝が中に入ると、そっと後ろからシャオミンが時枝の肩に手を掛けてきた。

「お帰りがお早かったのですね」
 時枝が顔を横に向けて言う。
「ん・・まぁね。今日は時枝くんが来る日だったから」
 シャオミンは後ろから時枝のネクタイを緩める。
「シャオミンさま、例の買収の件ですが・・」
 すると、シャオミンが時枝をひょいと抱き上げてベッドへドサリと落す。
「それについてはベッドでゆっくりと・・ね?」
 そう言って艶めかしい笑みを浮かべて時枝のネクタイをシュルリと抜き取ると、そのまま時枝の唇を激しく塞ぎにかかった。

 そして、時枝はシャオミンの身体を受け入れた。

* * *

 淳平は腕の中に収まった小さなタンポポのような青年に癒されていた。
 だが、ふといつか見た弘夢の色鮮やかな笑顔が脳裏に浮かぶと、急に現実に引き戻されたように沢村を
引き剥がした。
「あ・・悪い。おれ・・」
「ううん。いいです。嫌じゃなかったですし、俺で良ければ力になりますから」
「ありがと・・本当に」
 何を後ろめたい気持ちになっているのか分からなかったが、淳平の心の奥底で罪悪感が湧いてきていた。

「買い物でも、行きませんか!」
 そう、明るく行って淳平は半ば強制的に買い物に行くことになった。
 暫くはこれでいいのかもしれない。
 沢村には凄い迷惑な事かもしれないが、少し甘えさせてもらおうと、そう思った。
 
 他愛のない生活はあっという間に1週間過ぎた。
 生活リズムも大分慣れて会社の行き帰りもほぼ毎日一緒だった。
 本当に24時間共にいるようだ。まさに24/7だ。

「なぁ、ここだけの話、お前と沢村デキてんじゃないか?」
「ゴホッ・・」
 久しぶりに会社の同僚たちと飲みに行った時にそう言われて、ビールが気管支に入ってしまった。
「結構噂になってんだぜ?いっつも一緒にいるしよ、女で沢村が「今日の夕飯は何がいいですか」ってお前に話しかけてるのを聞いたって奴もいるしよ」

 同僚の目は好奇で光り輝いているように見える。
 7人程で入った居酒屋の畳の席には沢村も斜め向かいに座っていた。
「いや、今訳あってあいつの家に居候させてもらってるんだ。それだけだよ」
「ほぉ~。それにしちゃあ、沢村は随分と顔つきも変わって嬉しそうだよなぁ」
「世話好きなんだろ?俺も感謝してるよ、アイツには」
 淳平はグイッと残りの温くなりかけたビールを喉に流し込むと、苦味が舌の中央に淀む。

「今時ゲイは珍しくないからなぁ。沢村、絶対お前に気があるように見えるんだが」
 同僚の西牧(にしまき)が楽しそうに煽る。
「それはないだろう。色々と俺の事情も知ってるから人がいいだけだよ」
「ふぅん。アイツ結構可愛いから迫られたら迷うんじゃないか?」
 チラリと沢村に目をやると、可愛い笑顔で楽しそうに女の子たちと話している。
 その視線に気づいたのか、急に沢村が淳平の方に視線を向けて、ポッと赤くなったように見えた。
 慌てて誤魔化す様にモスコミュールを手に持って一生懸命飲む姿が可愛らしい。
 淳平は前に沢村を抱きしめた時の感触を思い出して想像しそうになって、頭を無理やり空にした。

「さぁな」
「・・否定、しないんだな」
 そう西牧に言われてジロリと睨みつけて、目の前にあった塩気の少ない枝豆を口の中へ放り込んだ。
 


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それから30話

☆18禁です

「え?・・あっ・・ああっん!」
「ああんっ・・すご・・いっ」
 時枝が容赦なく熱くカチカチに堅くなったアイレンのペニスを口内でグチュグチュと卑猥な音を立てて上下にスライドさせる。

 なるべく口内は真空状態に近くなるようにして、思い切り肉棒を吸うと、自然と頬の内側がペニス全体にピットリと張り付く。そのまま口は上下に動かし、口内では激しく舌でアイレンの弱いポイントを突いてやる。
 そして唇でキュッと締め付け、一番敏感な亀頭部分を強く吸い込むと、大抵の男は霰もない声を上げる。
「ひっ・・あああんっ」

 時枝は、強い刺激に耐えるために髪を掴んでくるアイレンの手を振り払い、側面から、正面からと幾度も角度を変えて吸引し、刺激を送り続ける。
 その間もやわやわとアイレンの玉袋を揉みしだき、後孔と玉の間をグリグリと押して外部から前立腺に刺激を送る。
「ダメっ・・ああっ・・よすぎ・・るぅうっ!」
 捕まる場所を失ったアイレンはソファの背もたれを掴んでは腰を浮かして気持ちよさそうに尻をうねらせた。

「きもちっ・・時枝さ・・あっあっ、ソコっソコぉぉお」
「ここですか?」
 アイレンはカリ首の後ろ部分が弱い。
「もっと・・もっとぉお」
「はいはい」
 時枝は面倒臭そうにグッとアイレンのペニスを掴むと、その弱い部分を集中的に舌で擦り始めた。
「ふっ・・ああああッ」
 アイレンの腰は宙に浮いたままで、臀部の筋肉がキュッと引き締まったまま全神経を時枝の舌に集中させていた。

「いぃ・・イっちゃう・・時枝さ・・イクっイクっ」
「どうぞ」
 時枝が下の歯で軽くその弱い部分を擦ってやると、ビクビクっと腰ごと反応させて、アイレンが啼いた。

「いっ・・ああああーッ・・出・・るぅうううッ」
 ビュルビュルと大量に射精された液体は思い切り、時枝の口内へと溢れる程に発射された。
「んん・・・」
 思わずその量に鼻から艶めかしい声を漏らしながら、時枝はアイレンのビクつくペニスを口からヌルリと引き抜いた。
 すると、タラリと時枝の口端から比較的薄い濃度の精液がこぼれて流れ出た。
 
「時枝さん、私の精子が口から零れてますよ。すごくいやらしい顔で、すごくきれいだ。」
「・・・」
 時枝はこぼれるアイレンの精液を拭こうともせずにアイレンを黙視している。
 アイレンはゆっくりと体制を整え、ソファに向かって反対向きになった。
 背もたれを掴み、座席部分に膝立ちになる。
 丁度、子供が電車に乗って窓の外を見るような格好だ。

「くるのでしょう?」
 アイレンが流し目で誘うように剥きだしになった尻を突き出した。

 弾力があって形のいいふっくらとした臀部は艶めかしくうっすらとかいた汗で艶やかに光っていて美味しそうだ。
 時枝がゆっくりとアイレンの背後に立つと、アイレンが口角を上げて自分の手を臀部へと持っていく。
 そして自分の尻を掴んで左右にギューッとひっぱり、後孔を伸ばしてきた。
 視線は後ろの時枝に向かったままだ。

 時枝は眉一つ動かさずにその開かれた薄い桃色の後孔に向かって、立ったまま口内に溜め込まれた精液をトロトロと垂らした。
 なま暖かい液体が敏感な後孔に大量に掛かると、ピクンとアイレンが反応した。
「んっ・・ん」
 時枝がグチッと細く長い指をアイレンの後孔に入れ込むと、そこは既にとろけてどんどんと抵抗なく指が引き込まれていく。

「あなた、もう用意していたのですか」
 時枝が冷たい眼でアイレンの高揚した顔を見る。
「ええ、そりゃあね。んっ・・も、大丈夫ですから、入れて下さい、時枝さんっ」
 時枝はハァと溜息をつくと、瞳を何やら痛そうに指で押さえた。

「コンタクトが外れてしまいました・・」
 そう言ってスタスタと鞄の元へ行き、ガサガサと鞄から眼鏡を取り出してカチャリと掛けて戻ってきた。
「はぁ・・眼鏡の時枝さんもイイですね・・早く犯されたいです・・」
 アイレンは自分の指を後孔に入れ込んでクチャクチャと一人遊びをしている。
「何を勝手に遊んでいるのです」
「だって、時枝さん、勝手に向こうへ行ってしまうんですもの・・んっ・・ふ」
「じゃあ、そのままで結構です」
 時枝が自分のジッとジッパーを下ろして、半分立ち上がったペニスを取り出した。
「ああんっ、時枝さんのペニスっ」
「何です」
「早く欲しいっ」
「でもまだ勃ってません」

 時枝が自分のペニスの先を、精子のたくさん掛けられてるアイレンの後孔に擦り付けると、アイレンがたまらず声をあげた。
「ふっ・・ああんっ、はや・・っく!ああんっ」
 亀頭部分を強くアイレンの後ろの入り口で摩擦していると、だんだんと硬さが増してきた。
 時枝が、もう十分だろうと判断したところで、告知も無しにアイレンの腰を強く掴むと、ググーッと内部へ挿し込んできた。
「うあっ・・急にっ・・や・・あああっ・・ああっ」
 時枝の肉棒が自分の恥ずかしい場所へ侵入してくる感覚にいつもゾクゾクと鳥肌が立つ。

 時枝は催促されるがままに、アイレンの弱い場所を丹念にペニスで刺激してやる。
 アイレンは気持ちよさに涙を薄く流しながらソファにしがみつく。
 立ったままパンパンと打ち付ける時枝の力は、アイレンの乗っているソファを少しずつ前へずらしていった。
「いやっ・・やっ・・いいっ・・す・・ごっ・・ああん!」
 アイレンは口から流れ出る唾液もそのままに浅く息をしながら時枝の蹂躙を堪能していた。
 後ろを振り向くと、相変わらず無表情で、レンズの向こうにある美しい切れ長の鋭い瞳は結合部分を冷ややかに見ていた。
 アイレンはあの時枝が自分との繋がっている部分を見ながら肉棒を挿しているというだけでオルガズム感がせり上がってきた。




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時枝の初タチシーンでございます。

そしてですね、今朝ハトコから電話がかかってきまして「もうやっていく自信がない・・」と。
え!新婚旅行中に!?と大焦りです。今日は相談にのってきます・・。


ポチして頂くとアタシのエロ暴走が加速します
(只今時速300キロ)500系のぞみを抜けるか!?

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それから29話

☆18禁です

 時枝は上質の革靴特有のコツコツという女性のハイヒールとはまた違う、重みのある音を響かせて中国の李教、日本支部頭首の屋敷内を歩いていた。
若干光沢のある漆黒の細みスーツが時枝の上品な姿を引き立たせている。

 世界全土に広く渡って活動している李教は裏の世界ではその力を知らないものはいない。
 政治からマフィアまで多種多様に繋がりを持ち、木戸の家系は代々この李教と深く関わってきていた為、裏で稼ぐ金の額は表のビジネスの非ではなかった。

 そして今日も、木戸の代わりに時枝が今後のスケジュールの話し合いをする為にこの屋敷に呼ばれたのだ。
 
「はぁ」

 時枝は小さな溜息をつきながらトントンと扉を叩くと、中から肩まである長い黒髪を一つに束ね、執事服を身に纏った美しい男が出てきた。

「ようこそ。時枝さん」
時枝はその見慣れた執事に無表情で挨拶を返した。
「どうも。アイレンさん」

 アイレンと呼ばれた執事は、色気のある笑みを浮かべてドアを広く開けて時枝を部屋へ招き入れた。
 中国風の洗練された部屋は商談などでも使われる部屋だったが、赤色の入った絨毯やカーテンが、高級レストランの雰囲気を彷彿させるようだ。
「暁明(シャオミン)さまは?」
 時枝が部屋の中央へ辿り着く前に聞く。
「まだですよ。あと1時間後くらいで戻られます」
 時枝が呆れたような冷たい目をアイレンに向けた。その目を見たアイレンは薄く笑う。

「あなた、また私を早く呼んだのですか」
「ふふ・・そんな怖い顔しても更に綺麗に見えるだけですよ?」
 時枝が腕組をする。
「私、忙しいんですが」
 アイレンが仄かな色香を纏って時枝の前まで近づいてくる。
 執事服を纏ったそのアイレンという男は体格も背丈もほぼ時枝と同じく、上品というよりは妖艶さが上回る美しい容姿だった。
 
 アイレンが時枝の顎に指を当てて美しい顔を近づけてきた。
「だから、私にあなたの1時間を下さいよ」
 アイレンが切れ長の瞳から伸びる視線を時枝の唇へ落した。
「やらしい顔、してますよ。アイレンさん」
「ええ・・“愛人(アイレン)”ですから」
 そしてアイレンは時枝にそっと唇を重ねた。
 アイレンの蕩けそうなほど柔らかい唇が執拗に時枝の固く閉ざされ、微動だにしない唇に勝手気ままに擦りつけられる。

「アイレンさん、座っても?」
 時枝は、普通に立っているのが疲れたかのようにアイレンに聞く。
「どうぞ」
 時枝が硬すぎず柔らかすぎないその上質なソファへ腰掛けると、続いてアイレンも隣へ座る。
 時枝が腕時計を見ようと右腕を上げると、アイレンが時枝の顔を両手で包んで自分の唇へ引き寄せた。

「あなたのそういうところ、堪らない」
 アイレンはそう言いながら強引に時枝の口内を開けて舌を侵入させた。
 時枝は勝手に口内を弄られていたが、子供でもあやす様にアイレンの妖しく蠢く舌を捉えて絡めつかせた。

「あっ・・ん・・ふっ・・はぁ・・ん」
 アイレンから甘ったるいいやらしい声が漏れ出す。
「本当、いやらしい人だ」
 そう言って時枝は容赦なく唾液を送り込んでやる。
「んっ・・んむっ・・」
 アイレンは口端から一筋、唾液を零してしまうと時枝が叱った。

「何零してるんですか、アイレンさん。執事ともあろうモノが。」
「はっ・・ん・・ごめんな・・さい」
「では、これでお終いです」
「えっ、そんな意地悪しないで下さいよ、時枝さん!」
「シャオミンさまにそのうちバレて叱られますよ?」
 時枝がほんの少し口角を上げると、アイレンはゾクッと身体が泡立ち、時枝を見る瞳がトロンと溶けた。

「ねぇ、時枝さん・・」
「何ですか」
「たまには私にもさせて下さいよ・・」
「断ります」
「あなた、いつもそうだ。絶対に自分の身体を私には触らせない」
「私のビジネスの取引相手はあなたじゃない」
 時枝の表情は冷たく凍ったままだ。
「はぁ。まぁいいです。つれないあなたが素敵なので」
「それは恐縮です」

「じゃあ、せめていつものようにしてくれません?」
 アイレンが誘うような眼で時枝の唇を指でなぞる。
 アイレンは執事だが、この屋敷の頭首のシャオミンの愛人だ。下手に扱うことも出来ない。
「わかりました」
 時枝がアイレンに向き直る。
 アイレンはこれから起こる快楽を想像して顔を紅潮させてソファに寄りかかる。

「何しているんです、ご自分でお脱ぎになって下さいアイレンさん」
「ええ?脱がしてくれないんですか?」
「私はあなたのように執事ではないんです」
「意地が悪いんですね、時枝さん」
 言葉とは裏腹な恍惚とした表情でアイレンは時枝を見ながら、自分のベルトを緩め、既に硬く先走りでベトベトになった赤身の強いペニスを曝け出した。

 時枝はソファの下へ片膝を着いてアイレンの足の間に入り込むと、そのグロテスクなものが目の高さまで来る。
 アイレンのソレは、今か今かと待ち遠しいかのようにピクピクと反応している。
「私は、どちらかと言うと意地の悪い方だと思います」
 そう言って時枝はヌルリと大きめなアイレンの亀頭を吸引して全てを喉まで入れ込んだ。



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★「それから」はすれ違った後に(全10話)の続編です。 

昨日の疲れを引きずってます;
眠い・・(。´-д-)。o○Zzz。o○(。`・д・) ハッ!
そして今回は時枝でした^^


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